ドラゴン

 私は一筋縄ではいかない苦難に遭遇した。ゴブリンの食事になりかけたのだ。森を通るリスクは予想していたが、実際の危険は想像をはるかに超えていた。あそこまで発展したゴブリンの集落を目の当たりにするのはこれが初めてで興味深かったが、立ち止まる暇はなかった。

 私がその森を通ったのは、目的地への『最短ルート』だったからに他ならない。


 そして私は目的地にたどり着く。活気ある城下町を抜け、巨大な城の門をくぐった。衛兵たちに何度も『許可証』を見せるのは面倒だった。城の地下深く、冷たい石が並び、鎖の響きが壁に反響するその場所に、は存在した。


 生きた伝説──すなわち、ドラゴンである。酒場で囁かれ、バラードで歌われるその存在は、手つかずの自然の象徴であり、壮大な物語の主役だった。


 エメラルドとルビーのタペストリーのように輝く鱗を持つこの生き物は、不安定な眠りについていた。その胸は力強い呼吸によって上下し、湿った空気を威圧的な渦に変えていた。このドラゴンの息は森を灰に、城を溶岩に変える焼けつく炎を生むことができるのだ。眠ってはいても、近づくべきではない。魔法で強制的に眠らされているが、その意志は屈服していない。魔法の鎖で身体を封じられてはいるが、それを簡単に引きちぎれるような力強さを感じさせた。


 ドラゴンはうっすらと目を開けた。その目は古代の知恵と世界を見渡す鋭い洞察力を秘めているようだった。


 ドラゴンは単なる炎と怒りの獣ではない。この世界に満ち溢れる魔法の力と内在的な繋がりを持つ生き物だ。世界最強であり、最も賢い生き物とも言われている。彼らは孤高の生き物であり、人間の前に姿を現すことはめったにない。彼らは他の生き物に興味を持たず、ただ冷たい視線を送るだけだ。何を食べ、どこに生息しているのかは、謎に包まれている。


 ある文献によれば、ドラゴンの心臓は最も強力な魔法の源であり、その血は元素の力に満ちているという。勇敢かつ向こう見ずな冒険者たちがドラゴンを倒そうと試みてきたが、成功した者はいない。


 ドラゴンの翼は、革と筋肉の壮大な帆であり、天に届くことを願って体側に折りたたまれている。背中の筋肉は雲の上を飛び、天空に挑む力を秘めている。


 それは神話でありながら、血肉を持つ生きた存在だ。ドラゴンを理解することは、自然の秩序を解読することほど複雑である。


 私はかつてないほど気分が高揚しているのを感じた。


 ドラゴンと、目が合った。


 私は──。

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まものづかん えす @es20

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