第27話、稀に見る鬼才(他人視点)

自分はクルード、エルフの国に仕えている将軍であり、先程に魔王軍四天王の一人、ツナミ・ノマレールの軍勢を撃破したところである。



噂で軍事的なことは苦手だと聞いていたが想像を超えるほどの下手さであそこまで下手なら三千でも勝てたと思っている。



そうして我々は集まって軍議を開いていた。このまま国に帰るかそれとも奪われた土地を取り返しに向かうかと議論をしていた。



普通なら迷いもなく進軍をするのだけど今回ばかりは慎重であった。そこを守っているのは魔王軍の中でも名将と呼ばれているテンガ・ヒノモトが守っているのだ。



あの者は人の軍勢を僅かな手勢で撃破しており、その上に我が国の領土も奪い統治に成功しており地元のエルフ達を民心を得てしまった。



これは並の人物が出来ることでなくて間違いなく先程に倒した者よりも遥かに大変な相手になる事は理解していた。



そのために軍議で決めようとしていた、そうして奪還しようとする声が大きかったので自分たちはそのまま進軍を始めた。




そうして自分たちはテンガ・ヒノモトが治めている領地に入りすぐに陣営を作り出して夜に備えていた。



テンガ・ヒノモトは主に夜戦など得意としているので遠征している上に戦いで疲れている自分たちを夜襲で襲ってくるのは理に適っている。



もし、自分なら間違いなくするだろう。遠征軍ほど疲れが溜まって油断もしてしまうものだから自分はその日は寝ることはせずに鎧を着て待っていると遠くから太鼓の音が聞こえてきてやはり、夜襲をしてきたかと迎撃態勢をして待っていたが誰も来なかった。



おかしいなと思いながらも自分は鎧を脱いで眠りにつこうとしたその瞬間に再び、太鼓の音が鳴り響いた。



しまった!最初の音は油断させるための行動だったのかと自分は焦りながらも現場に辿り着いたが誰も来る事はなくテンガは何を考えているのだと思いながらも又しても陣営に戻った。



その後に又しても太鼓の音が鳴り響いたので迎撃しようとしたが誰も来ることはなかった。



自分はどこから音が聞こえると翌朝になって調べようとしたがその険しい土地に山脈もあり、調べようにも軍を分裂したら格好の獲物になってしまうので分裂をするわけには行かなかった。



困ったと思いながらも自分たちは敵を探し始めたが見つからずに夜になれば太鼓の音が鳴り響いて眠ることも出来ずに自分も部下たちもみんな不眠で体力が落ちていた。



撤退をしたほうが良いのではないかと部下からもそのような声が上がっているがここまで来た以上は何かしらの戦果を上げて退却したいと考えているのでまだ早いと答えた。



しかし、こちらの体力が失ってきていることもまた事実でありどうにかしないといけない状況には変わりはなかった。そんな時である、ここに来て悪い話が舞い込んできてしまったのだ。



兵站で使っていた道が敵軍によって破壊されてしまったと言うのだ。これで本国から物資の輸送が止まってしまった。流石に五千の兵士たちを養えるほどの物資は殆ど残っていない。



そしてその日もいつと通りに太鼓の音が鳴り響いくだけのはずだった。もう何回目になるか忘れるほどに聞いた太鼓の音と共に敵軍が本当に夜襲を仕掛けてきたのである。



兵士達はもちろんのこと自分ですから完全に油断してしまって一方的に攻撃をされてしまったのであった。しばらくして一部の部隊が反撃準備が終わりそうになった時に敵は退却した。



目に見える被害は軽微であるが目に見えない被害は甚大なものであった。これまでは太鼓の音が鳴り響いても夜襲などないだろうと思っていたが一度でも経験をすると警戒してしまう。それは兵士たちに睡眠時間を奪ってしまい結果的に弱体化を招いてしまう事になる。



こうなれば一か八かで攻勢に出るべきかと考えていたがここで更に悪い知らせが入ってきた向こうの本国から援軍が次々へと到着して来ているというのだ。



その証拠にかがり火が夜が迎えるたびに多くなり既に自分たちよりも数が多いことは理解した。



普段ならば問題なく戦うが体力も失っている上に補給路までないのでは勝ち目は無いに等しいと自分は考えて総退却を命じた。



少しでも本国にみんなを帰すためにこの敗戦の責任は自分が取るからと伝えて退却を始めた。

 


夜に紛れて退却をして相手の目をかいくぐってなんとか破壊された道まで辿り着いた。そこは確かに物資を運ぶことは出来なくなっているが人が向こうまで渡ることは出来そうであったので渡り始めた。



敵がこちらに来る前に退却を終えたいと思いながら殿として最後尾で敵に備えていた。そうして3分の2辺りが退却を終えた頃だろう、敵の追撃隊にとうとう追いつかれてしまったのである。



やばい、急いで逃げなくとは自分は残っている部下達に鎧や道具そして武器を捨てても構わないから生き延びれと叫び、兵士たちは自分の言うことを聞いてくれて一斉に捨て始めた。



そしてここで我々に幸運な事が起きたのであった、敵の大半が我々が捨てた荷物が珍しいのか取り始めて攻撃が少なくなり、他の攻撃も向こうも疲れているのか命中率は低かった。



良し!これならば生き延びれると確信をしてそして自分も皆の退却を見守った後に他の者と同じ様に荷物は捨てて逃げ延びた。



まさしく命からがな逃げ延びた自分たちは何とかして国に帰還する事に成功して自分は最初の勝利後、追撃して敗北した事を陛下に報告した。



「陛下、すべての敗戦の責任は自分にあります。部下達の処罰はせずに自分に責任を取りますのでどうかお願い致します」



そう、お願いをすると陛下は長く戦っていれば負ける事もある。それにお主はあれ程の戦力を覆した後だから仕方がない、それに多くのエルフ達は生き延びたからそこまで責めなくても良いと言われるのであった。



確かに戦いをしてきたわりにはかなりのエルフ達が生存していた。その代わりに物資の被害は相当なものでしばらくは軍事行動を起こせない程である。



それにが奪われた土地を奪還するために向かう兵站の道が一つも残っていないので軍勢も送ることは出来なくなった。



しかし、それは向こうも同じことで攻めてくることはないからそこだけは助かったと言えるかもしれないが。



ともかく自分はせっかくの領土の奪還のチャンスを無駄にしてしまったことには変わりはなかった。



最初の戦いの褒美はなしという形でことが終えたがその後に数人、テンガ・ヒノモトの領土に潜入して当時の状況など詳しく調べさせた。



相手の事を理解しなければ次も負けてしまうと感じたので調べたらとんでもない事実が発覚した。



なんとあの時にいた兵士は僅かな一千しかおらずしかもその大半が我々の兵站に使っていた道の破壊に向かっていたために500も満たない数しかおらずその上に援軍だと思っていたあれは地元のエルフたちがやったことである。



我々に援軍が来たと思われる幻の援軍を見せていたのだ。そして追撃戦も殺すのが目的ではなくて相手の物資を多く奪い取るためにした行動だったことが理解して自分は唖然としてその報告を聞くのだった。



完全に裏をかかれたと自分は何から何までテンガ・ヒノモトに負けてしまったのだなと思い知らされた。



自分は別に才能が無いわけではないと思っているがこれは相手が天才過ぎる・・・いや、テンガ・ヒノモトは天才さえ超えてしまう鬼才かも知れないなと考えた。



それでも次に戦う時には勝つために努力は惜しまない、次はこの前の敗戦の汚名を返上させるような戦いをしなければならないと考えて自分はそれから初心に戻り軍隊の指揮を見直す事にしたのであった。



だが、これはだけは言いたい、同じ指揮官としてお見事な戦術だったとそして次は国のためにも貴方を超えてみせるとまだ見ぬ宿敵に対する評価とそしてリベンジを果たすために今日も兵法の勉強をするのだった。

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