第12話、危険な天才(他人視点)
私は魔王様に仕える四天王の一人、水を司るツナミ・ノマレールである。古くから魔王一族に仕える歴史がある名門家の当主で周りからは絶世の美女と呼ばれている。まあ、種族がサキュバスだから当然と言えば当然なのだけどね。
さて、私は最近になってとても悩みの種が出来てその上にそれが大きくなっているので困っていた。
それは成り上がりのテンガ・ヒノモトという若造だ。あの若造は最初から気に入らなかった、いきなり騎士クラスで召抱えられた時は私は魔王様に反対をしていた。
あの者はただ暴れていただけのならず者でありそれ以上でもそれ以下でもありませんから登用は駄目ですと伝えたが結局のところ登用してしまったのだ。
だから私はすぐに失脚するように問題が多く抱えている部隊長に任命してすぐに失敗をするだろうと考えていた。いくら個人的な力が強くても部隊を指揮する力はまた別と思い油断をしていた。
しかし、実際はそうはならなかった。あのテンガ・ヒノモトはあれ程に問題が多くある部隊をまとめ上げて戦果を次から次へとを出していった。聞いている私も信じられないぐらいに実績をあの成り上がりのテンガ・ヒノモトは積み上げたのだ。
そうして私は何とかして失脚するようにあの他人の言うことを聞かないツチニ・モドールと共に行かせて失敗をするようにさせた。いくら指揮する能力があっても上司の命令には従うしかないだろうと私はそう考えていた。
なのに失敗したとも言えるかもしれないがあのテンガ・ヒノモトの部隊だけが無事に帰還を果たしたのである。
他の部隊は全滅して逃亡でもしたのかと思ったがテンガ・ヒノモトの部隊は最後まで戦い、敵を多く倒してきたのである。
そしてテンガ・ヒノモトは一人だけで数千の人間を倒してきたと言う大戦果を上げてきた。その方法も武力でなぎ倒したと思ったら智力で敵を倒したりと文句が何も言えないほど素晴らしいと私も不覚ながらそう感じてしまった。
私でさえこれなのでそれ以上に喜んだ魔王様が遂に貴族にさせようと男爵の爵位を与えてしまった。勿論のこと私は反対したが多くの者が肯定側にいた為に私も承諾するしかなかった。
しかし、よく考えてみればあの成り上がりのならず者が町など統治できるはずがない。その上に与えられた場所は小麦が育ちにくい土地で町も貧しいからすぐに失敗して失脚するだろうとこの時の私はそう考えていた。
けれども現実は違っていた、僅か数年であれ程に貧しかった街は異様な早さで発展を遂げたのである。それに小麦に変わる新たな作物を栽培はじめた。
それは玄米と言うやつだが苦味が強いけど栄養は今まで主食としてきたパンなど比べ物にならないぐらいに栄養満点なのだ。
悔しいけどこれを軍の食事に切り替えたら疫病がかなり収まったのだ。それだけにパンよりも効果があることが証明されてしまった。
それだけでも軍の評価が上がっていたのにあの内政のせいで更にテンガ・ヒノモトの評価を上げていた。
そしてついこの前は私が放ったスパイが不正をしていたがバレて監獄に連れて行かれてしまった。あれ程に根回しをしていたスパイが捕まるのは尋常な事ではない。
他のところでは捕まることはなくなんなら魔都にも不正をしてバレずにやり遂げたことがある実力者がこうして捕まるのはあの男にはそれだけの才能があったのだ。
そう、私はただ、強いだけのならず者と思っていたが実際は違っていた。頭が相当回り、人心を掴むのが巧みにうまい人物だった。
このままでは異例の出世として子爵まで上り詰めてしまうかもしれないと私は焦った。しかし、それを防ぐにはと私は考えていた時にある閃きを思いついたのである。
あの成り上がりにエルフの国、征伐をしてもらおう。いくら戦いの天才でもあそこの国を落とすのは不可能、現実にほかの四天王がいくら攻めても少しも領土を奪う事ができなかった。
そのために必ず失敗するだろう、魔王様にはかなりの期待を掛けられているから上手く言えば私の提案に乗ってくれるはずそうなれば後はあの成り上がりが失敗するのを待つのみ。
全く、私ながらなんて素晴らしい発想なのと私自身を褒めていた。なら行動は早いほうが良いと思い翌日に魔王様に提案をするのだった。
「魔王様、今日も何よりです。そして本日この場に現れた理由は我々、四天王が何度も苦しめているエルフの国に再び遠征をしてみるのは如何でしょうか。勿論のこと人選はあの者を推薦いたします」
するとあの者とは言われたので私は最近、素晴らしいほどの功績を上げているテンガ・ヒノモトに任せて見たいと私はそう考えておりますと伝えた。
魔王様はなるほど確かにそれは名案かもしれぬなと言いながらならテンガ・ヒノモトにはエルフの国の遠征軍の大将をさせることになった。
目的通りにさせる事に成功したが魔王様はあの成り上がりのテンガ・ヒノモトに対して奪い取った土地をそのまま任せると言うのだ。
これは男爵としては異例のことで有能な子爵でようやくなのに男爵程度で、しかも成り上がりがと怒りが現れたけど冷静になり考えた。
よく考えれば奪い取った試しがないのでこれぐらい餌を用意しないとあの成り上がりを釣ることはできないから仕方がないかもしれないと思い始めた。
それにそれだけに信頼されているのに失敗したら一気に失脚に追い込めると考えると悪い事ばかりではないと思い私はあの成り上がりの末路を考えて自然と笑みを浮かべているのだった。
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