第7話、天才指揮官(他人視点)

自分たちはあれからいくつもの戦場を乗り越えて武名を大きく上げていった。テンガ隊長は勿論のこと自分たちまで上がっていたことには少しばかり大袈裟だなと感じた。



自分たちはあくまでテンガ隊長の指示を従って戦っていただけであり本当にすごいのはテンガ隊長なのにと考えていた。



そんな時に自分たちにとうとうかつてない程の大きな戦いに呼ばれたのだ。しかもその戦いの大将は魔王軍四天王の一人、ツチニ・モドール伯爵であり、他にも子爵や男爵の魔族たちも参戦しておりその大規模さは理解できた。



自分たちはテンガ隊長のおかげでとうとうここまで来たのだなと嬉しくなって共に進軍していた。



そんな時にテンガ隊長は何かを感じ取ったのか自分たちにこれから戦場になりそう場所の地形を調べてこいと言われた。



何もそこまで心配しなくても魔王軍四天王がいるのですから負けませんよと思ったがテンガ隊長がこのように命令を下した時は必ず、何かしらが起きる時なので何も言わずに従って調べた。



そうして調べた地形をすべて書き写して報告書を提出するとテンガ隊長がやはり、敵の狙いはそうだったのかと言ってテンガ隊長は何かに気がついたようだった。



これを見て何が分かったのですかと尋ねてみるとテンガ隊長はこんなことにも気がつけないのかと少しばかり残念そうにして副官のナオさんも紙に書いて衝撃な顔をしてマジで!と書いて驚いていた。



何が?何が分かったのですかと言うとテンガ隊長は静かに説明をしてくれた。



「良いか、この先にある森を抜けると大きな谷があり、そして地形から谷間に入る事になるがこの谷間の左右に伏兵を置かれる可能性が非常に高い。そして敗走して森に逃げても火をつけられたら軍勢は完全に崩壊して敗北をしてしまうだろう」



確かに言われてみればその通りですがでも人間たちは我々と既に戦って敗北を繰り返しておりますのでそれは考え過ぎでありませんかと言うとテンガ隊長はこう話した。



「それは恐らく、相手の有利な地形に誘い込む為にわざと負けていると考えている。こちらが何回も勝てば相手は弱いと思って特に深い考えをせずに戦う事になり、相手の作戦など考えないだろう。相手はあの智将のカクト・ブンダだ。きっとこれも彼の作戦の一つだろうな」



ならこれを上の魔王軍四天王のツチニ・モドール様に報告をするべきですと伝えるとテンガ隊長は難しそうな表情をしていた。



勿論のことそれをするつもりだろうが受けいられることはないだろうと口に出した。その理由は戦いに勝っているときに己の考えが正しいと思っているは時に違うと伝えても信じてくれない。



己の考えが正しいと思っている時はどんなに説明をしても信じてくれないだからこそ、相手はかなりの手だなと思っている。



こうなれば最悪、軍規違反を犯しても別働隊として行動するしかないかもしれないなと言っていた。



そこまで追い込まれているのですかとこの時はそう考えていただけであったが数日間、相手は負けてばかりでテンガ隊長が言っていた通りにあの場所に近づいてきて自分たちは不安になっていた時にテンガ隊長が遂に別働隊として独断で行動すると言ってきたのだ。



このままでは自分たちも危険だと言ってからその日の翌日から別働隊として動き出した。それからしばらく進軍すると本隊の方で動きがあり確認すると同じ魔族たちがやられている悲鳴がこちらまで聞こえてきた。



その上で遠くからでも分かるぐらいに森から炎が立ち込めて空まで黒い煙が登っていた。それを見てもしそのまま一緒に進軍していたら死んでいたかもしれないと思うと真っ青になっていた。



その時にテンガ隊長が思い出したように言葉を出した。



「彼を知り己を知れば百戦あらうからず。彼を知らず己を知れば一勝一敗する。彼を知らず己を知らざれば戦うことに必ず敗れる」



自分たちはその言葉はどのような意味なのですかと尋ねるとテンガ隊長は答えてくれた。



相手を知って自分を知れば負けることはない、相手を知らず自分を知っていれば勝率は五分、相手を知らず自分を知らない奴には絶対に勝てないと意味だと教えてくれた。



どうやらテンガ隊長の故郷で孫子の兵法書に書かれてあった一文らしい。テンガ隊長は物知りだなと感心しながら自分たちは目的の砦まで辿り着くことに成功した。



テンガ隊長の予想通りに敵兵は少ない上に油断をしていたのでこちらが少なくても勝算はあると自分たちでも理解できた。



その後にテンガ隊長が号令をして自分たちは一気に砦にいる敵兵を打ち倒してこちらは被害なく砦の制圧に敵将、カクト・ブンダを隊長、自ら打ち倒して士気は高くなった。



しかし、ここで隊長が次の作戦のために今はゆっくりと休めと言われたのである。確かに強行で砦に向かった上に戦いもしたので体力がかなり失われていた。



自分たちはテンガ隊長の言葉に従って休む事にしたがテンガ隊長だけは未だに一人で作業をすると言うのだ。



手伝いますよと言ってもテンガ隊長は部下に対してここまでやってもらったからお前たちは気にせずに休むが良い。これも上として当たり前のことをしているだけだと話した。



テンガ隊長は本当に誰よりも頑張っている姿を見てここに入隊できた事を誇りと自分の運を持っていると言えた。



自分たちはテンガ隊長が次の作戦を始まるまでしっかりと休む事にした。テンガ隊長の足手まといにならないようにする為に。



それから約5時間後に作戦を伝えると言われて自分たちはすぐに指定された広間に集まってテンガ隊長の作戦を聞くのだった。



「皆には連戦で疲れが溜まっているところ申し訳ないが、もう一度だけ俺に力を貸してほしい。次の作戦で戦場を離脱して堂々と国に帰還しようではないか」



そう伝えた後に作戦内容を谷間に爆弾を設置してから谷間に隠れてから敵が谷間に入りきったら谷間の入り口に落石で塞いでから爆弾を爆発させて自分たちはそれで逃げると言うのだ。



なるほどそれでしたら追手が来るのにも時間がかかりますからとても良い案だと思いますとみんなも賛成してすぐに行動に移した。



その時にもし予想よりも敵が多かった場合はどうしましょうかと声が上がった。するとその時はテンガ隊長、自ら殿をすると言うのだ。



それは一番危険な役割なのにそれを隊長自らやるなんて聞いたことがありませんと言うとテンガ隊長はだからこそやるのだと答えた。



本当に隊長は英雄でもなるつもりなのですかと聞きたくなるぐらいだったけど時間もないのでそのまま作戦に移動する事になった。



作戦通りに準備をして敵を待ち構えていると予想よりも遥かの大軍がこちらに迫ってきていたのである。



まずいと思いながらも作戦は継続されて自分たちはテンガ隊長の言う通りに敵部隊が谷間一杯に入ったら谷間の入り口に落石を起して封鎖をした後に炎属性の魔法で引火させて大爆発を起こさせた。



するとテンガ隊長が作戦通りにナオ副官が臨時で指揮をして退却せよと言ってきたのである。自分たちはあの数を一人では無理ですと答えたけどテンガ隊長は陽動は一人で十分だと言って翼で羽ばたいて敵陣に突撃をしたのである。



自分たちはテンガ隊長の思いを無駄にしない為にも命令に従って退却をしたのである。それから二日後にテンガ隊長は自分たちと合流して一安心をした。



話だと敵兵を多く討ち取ったので完全な負け戦ではなくなったと言っていたけど負けたことには変わりはないと最後は悲しそうに話していた。



そうですよね、1万以上の大軍を率いて帰って来るのが僅か百名ぐらいしかいないですからと考えてた。



それでも自分たちはテンガ隊長のおかげで生き延びる事ができました。自分たちはこれからもテンガ隊長を信じて行動をしていきますと決意を伝えるとテンガ隊長は少しばかり嬉しそうにしてそうかと答えるのだった。

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