第9話「ラブソング」
序奏のコードを弾き終えると、会場から拍手が起こった。緊張が一気に解け、肩の力も抜ける。そしてバイオリンに弓を添える。杉野さんの優しい指導が思い出され、身体全てが音楽に集中する。
アヴェ・マリアのメロディが会場に広がっていく。自分が奏でている音楽に引き込まれ、あたりの空気までが弦の振動とともに揺れ動いているような感覚になる。ステージのライトがまぶしく感じられたが、曲に集中し続ける。
最後のフレーズを弾き終え、会場が割れんばかりの拍手に包まれる。照明の中を見上げると、杉野さんがステージを見つめていた。その瞳には涙の色が見える。杉野さんも自分の気持ちを汲んでくれたのだと思うと、胸が熱くなった。
控室で杉野さんが飛び込んできて、ぎゅっと抱きしめてくれた。「すごかった...感動した」。その言葉が、自分への最大の褒め言葉となった瞬間だった。
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