第8話「学園祭到来」

待ちに待った学園祭当日を迎えた。文化祭でのバイオリン独奏まで、あと数時間。バックステージでは他の音楽系サークルのメンバーが楽器の調整や段取り確認に追われていた。


自分は地下音楽室で練習を繰り返すことに。弓を正しく操作できるか、音程は合っているか。何度も確認しながら、フレーズの表現までこだわる。曲は杉野さんが選んでくれた「アヴェ・マリア」。バイオリンの美しい音色が生きる名曲だ。


ステージに上がる順番が回ってきた。緊張で手の平が汗ばむ。「大丈夫、きみならできる」。杉野さんの声に励まされ、ステージに向かう。照明に照らされるや、会場からの拍手が上がる。これから自分の全てを音楽に込めるのだと思いを新たにする。


バイオリンを肩に当てる。杉野さんとの日々を思い浮かべながら、弓を弦に近づける。序奏のコードを奏でると、会場が一気に静まり返った。

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