第6話「夏目の葛藤」

杉野さんへの告白がきっかけで、バイオリンから遠ざかっていた。レッスンの予定日を忘れるふりをして無視を続けていたが、ある日思いがけず杉野さんに出くわしてしまう。「レッスン、再開しない?」と励まされる言葉に、胸が痛んだ。余計に杉野さんのことが恋しくなる。


でもこのままではいけないと思い直した。杉野さんが好きな人がいることを受け入れ、音楽だけは手放さないと決意する。レッスン再開の日、久しぶりにバイオリンを手にした。馴染みの感触に思わず笑顔がこぼれる。杉野さんも「よかったー」とほっとした表情だった。


レッスンを重ねる内に、また杉野さんの演奏に心を惹かれるようになる。告白の傷は癒えないが、音楽だけは前向きに取り組むことができた。「君ならきっと大会で素敵な演奏ができる」。そんな杉野さんの一言が、自信を取り戻すきっかけとなったのだった。

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