第2話「レッスン初日」
待ちに待った放課後がやって来た。約束の音楽室をノックすると、杉野さんの「はいー」という明るい声が聞こえた。ドキドキしながら中に入ると、杉野さんはバイオリンを腕に抱えて笑顔で迎えてくれた。緊張していたのか、自己紹介から始める私に杉野さんは口を手で覆って笑う。その笑顔がとても可愛らしくて、鼓動が速くなった。
杉野さんの優しい指導のおかげで、基本的な持ち方から弓の操作まで自然に習得することができた。バイオリンに触れるのは初めてだったが、なぜか弦の振動が心地よく手に伝わってくる。杉野さんも驚いていたようで、「夏目くん、音感があるね」と褒めてくれた。幸せな気分になり、思わず顔が緩んでしまう。
レッスン中も杉野さんの口元や手の動きを見ては気を散らしてしまう。近くで杉野さんの香りを感じられるこの時間が格別に幸せだった。「次は音階トレーニングね」。杉野さんの声に促され、弓を描く。バイオリンから生まれる音色に引き込まれていく。この感覚を大切に育てていきたい、とその時はぽかんと思ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます