第04話 見極める

 体力が底をついたのか、内藤くんはそのままぐったりとして倒れている。


 お坊さんたちはまだ拝んでいるけれど、さっより人数は少なくなっていた。


 もうそろそろ終わるのだろうか? 汗をたっぷりかいたノゾミくんが、第一段階は終わったよ、と教えてくれた。


 すぐに待子ちゃんが駆け出す。


「触らないで。まだ最後の浄化が残っているんだ」


 ノゾミくんに言われても、待子ちゃんは近寄ろうとする。そんな彼女をしっかりと抱きしめた。


「内藤くん! マモルくんてばぁ!! しっかりしなさいよぉ」

「ぼくがついているから大丈夫だよ。まだ最後まで終わっていないけれど、みんなはもうお家にお帰り」


 そんな、と待子ちゃんが泣き出してしまう。体力も我慢も限界だった。


「悪いものは全部出した。後は、彼が起きるまで身を清めるためにお風呂……? サウナみたいなところで魂を清めてもらう。心配しないで、熱中症にならないよう、ちゃんとかわりばんこで見張っているから」


 これが、ノゾミくんの本当の姿だったのだ。だって。


「坊っちゃん、お疲れ様でした。おやじ様にもきちんと報告致します」


 って。えーと、つまり、ノゾミくんが陰陽師?


「ごめんね。彼を連れて行かなきゃ」

「あ、あのっ星空くんっ」


 さっきまで泣いていた待子ちゃんが、シャンとしてハンカチで涙を拭う。


「護くんのこと、お願いします。それと、ありがとう」

「いいんだよ。ちなみに、今きみが涙を拭いたハンカチ、少し預かってもいいかい?」

「え? はい?」


 ノゾミくんは、御札型の紙の上にそのハンカチを置いてもらって、丁寧に懐にしまい込んだ。


「ごめんね、気持ち悪い思いをさせて。実は、このお祓いで彼の魂が行方不明にならないように、きみの元へ戻れるよう、きみのものが必要だったんだ」


 そうして最後に、あの噂話のこと、今日の出来事などを、できれば僕の正体も含めて誰にも言わずに隠してくれると助かる。と言って去って行った。


 お坊さん数名が新しい松明に火を灯しながら、下までお送りいたしましょう、と言ってくれた。


 いやはや、すごいものを見てしまった。まるで映画か夢みたいで、自分たちがそこにいたのが嘘みたいに思えてくる。


 階段の下まで送ってくれたお坊さんにお礼を言うと、坊っちゃんに伝えておきます、と丁寧に頭を下げてくれた。 


 自転車を引いている待子ちゃんは、本当にいつ倒れてもおかしくないほどフラフラで。あたしたちは、待子ちゃんをお家まで無事に送り届けた。


 ついでに、と言って、臼井くんがあたしを旅館まで送り届けてくれた。


「ただいま。遅くなりました〜」

「この不良娘っ」


 お母さんの平手打ちのお陰で、今日のことは全部忘れられそう。


 まぁでも。


「心配かけて、ごめんなさい」


 きっと、事情を話すこともできないだろうけど、謝ることだけはできるから。


「本当にごめんなさい」


 って、誠心誠意あやまらせてもらいました。


 つづく




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