第03話 祓う
「ワープするよ。準備はいいかい?」
みんなの答えを聞く前に、ノゾミくんはワープをした。
ワープですって!?
いくつものピクトグラムがあたしたちの周りをぐるぐるとまわりつつづける。
あ、なんか気持ちが悪くなってきた。
瞬間、薔薇の香りがしてきた。
そこは、さっきの道ではなくて、神社の境内で、たくさんのお坊さん? らしき方々が、炎を囲んで拝んでいる。
「伯父様、連れて参りました」
お、なんかイケメンの伯父様。
「これから学校ですのにすみません。はっ!!」
伯父様は、あたしたちに向けて手を広げた。それぞれが額に御札を貼られているのに、内藤くんだけ御札がくっつかなかった。
「伯父様、今回の被害は最小限ですみそうでしょうか?」
そうですな、と言って、さらに境内にお坊さんがぞくぞくとあふれてくる。
それはとても異様な光景で、ノゾミくんまで一緒にお経を唱えていた。
「みんなはぼくの後ろにいて。山田さん、心配しなくていいよ。ぼくらが彼を助けるから」
早口で告げたノゾミくんの後ろに周りこみ、状況を見守る。
お坊さんたちは代わる代わる内藤くんを取り囲んで、その中心で内藤くんがひどく苦しそうに悶え出す。あたしの後ろで見守る待子ちゃんの手は、がくがくと震えていた。
【がっ!? ヤメロー!! コノ少年ガドウナッテモイイノカ!?】
ひび割れた音が、内藤くんの口から出てきたことに驚きを隠せない。だってあんなの、内藤くんじゃないもん。
それでも、お経はやまない。お坊さんたちは、全力でお経を唱えているせいか、ものすごくたくさん汗をかいていた。
【ヴヴ、ガー】
もはや立っていることすらできないのか、内藤くんが地面に膝をついた。
そしてその口から、真っ黒くてドロドロしたなんだかわからないものが次々とあふれてくる。あれは、人間じゃない。あきらかに内藤くんに取り憑いたよくないものの正体なのだろう。
吐いても吐いても、内藤くんの口からすごく気持ちの悪いなにかがあふれ出し、これで最後か、と思った頃、突然ノゾミくんが地面を蹴って、内藤くんにたくさんの御札を貼り付けた。最後に軽く頭にチョップした。
やがて、最後の小さな欠片が転がり出て、ノゾミくんを始めとしたお坊さんたちは、次々と松明を手に持ち、黒いものすべてを、跡形がなくなるまで燃やし尽くした。
つづく
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