第02話 巻き込まれる

 うーんと? と、ノゾミくんが空を見上げた。


「それ、あまり良くないものみたいだから、知り合いの住職さんに相談してもいいかな? なんか、陰陽師並みに腕のいい祓い屋がいるらしいんだ」


 へぇ~。さっすがノゾミくん。顔は小さいけど、顔がひろーい。


「いいよ。えーとね。情報を持ってきてくれたのは、内藤くんだけど、あたしたちも一緒にいていい?」


 陰陽師〜。映画みたいな感じかな? それとも?


「それね、内藤くん他、他言無用でお願い。それ聞いた人、みんな連れてきて欲しいんだ」

「いいよ。いつ?」

「できれば学校をサボって、今すぐがいいんだ。学校には、ぼくが連絡しておくから」


 うん? そんなに悪いものなのか。本来の内藤くんは、シャイで、臼井くんと同じくらい朴念仁。だけど、いざという時に役に立つんだ。


 内藤くんは、待子ちゃんと仲直りしたのかな? けど、急用だから。


「ユイカは山田に電話して。おれは内藤に電話するから」

「うんっ」


 あ、あれ? なんか下の名前で呼ばれたような、って、そんな場合じゃなぁ〜い。


 あわてて待子ちゃんに電話をすると、すぐこっちに引き返すと言ってくれた。


 ちなみに、隣では臼井くんが親指を立ててたから、内藤くんも戻ってくるよね?


 二人が戻って来る間も、なんだかそわそわしちゃって、くだらないおしゃべりをしたくなる。


「ノゾミくんって、いろんなことを知ってるよね? 普段からたくさんお勉強してるの? あ、いや。そういう噂があるから」


 ノゾミくんに話しかけたことが親衛隊のみなさんにバレたら、あたし無事に旅館に帰れなくなるかもしれない。


「勉強ね、うん。そうだね。ぼくは知らないことを知りたいだけなんだ。だけど、そんなのってつまらないよね?」


 あ。


「ごめん、ノゾミくん。そんなつもりで言ったんじゃないの。ノゾミくんはたくさんのことを知っているからすごいなって。あたしもきちんと勉強しなきゃって思っただけで。だから、ごめん」

「かまわないさ。だけどきみ、ずいぶんと表情がゆたかだよね。笑ったり困ったり。ふふっ。そういうところ、可愛いな」

「か、か、可愛い!? いや〜、可愛いっていうより変なのかもしれないな? お婆ちゃんには、もう少し大人しくしなさいって怒られるの」

「大人はそう言うものだし、子供はそれでいいんだよ」


 なんだか、ノゾミくんにはげまされてしまったような気がする。なぜだか心の中でお礼を言う。


 ノゾミくんは、なぜだかいつも、面倒くさいことに巻き込まれてしまうようで、でもかっこよい。女子からすれば、孤高の王子様なんだけど、男子からすればスカした奴って思われちゃう。


 特に孤独が好きってわけでもないんだろうけど、自分は変わっているから、と卑屈になることが多いんだ。


 みんな、本当はお友達になりたいのに、面倒ごとに巻き込みたくない、との理由もある。


「それじゃ、えっと。それじゃ……」


 なにを話題にすればいいのかわからないうちに、臼井くんが片手をあげる。


 見ると、全力で往復してきた待子ちゃんを追いかけるようにして、内藤くんが向かってくる。


「やだ!! 追ってこないでっ」


 自転車のブレーキをかけて、あたしの後ろに回り込む待子ちゃん。ひょっとして、まだ仲直りしていないのかな?


「それじゃ、この四人ってことだよね?」


 うん、てあたしが答えると、ノゾミくんはパチンと指を鳴らした。


「レディースアンドジェントルマン。準備はいいかい?」


 ノゾミくん、かぁっこいー!!


 つづく


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