第9話 至近未来書店

 三年ぶりに紀伊國屋書店新宿本店へ行ったら、様相が様変わりしていて驚いた。至近未来! という感じの店内だった。

 今回はなんだかんだで時間が潤沢になかったし、そもそも新宿にたどり着いた時点で疲労困憊だったので、一階と二階しか見なかったのですが、明るいし、空間に余裕があるし、やっぱりこうじゃなくちゃな、と思いましたね。

 書店に何を求めるかは人によって違うと思うのですが、僕の生活圏には中規模店舗か、そうでなければ個人経営の店舗しかないので、うーん、空気感が明らかに都会の書店と違うんですよね。僕の近場の書店は、神保町でちょっと覗いた古書店とも違って、神保町の古書店は地方の個人経営の書店よりはるかに静かで、居心地がいい。あまり深く考えたことがなかったけど、僕の周りの書店は、どこか書店員に見張られている気がするかも。買うことを求められるというか、買わないと出て行き行きづらいし、つまり逆転して最初から入りづらい心理が自然と根付いている。都会の書店では、そういう感じはない。自由で、開放感がある。

 今回の紀伊國屋書店で面白かったのは、一階の話題の本や新刊本を見ている時、若い女性の二人組が話しながら近づいてきたのですが、一人が「小説なんて読まない」と言い出し、もう一人が「学校で読書の時間とかあったでしょ」と応じたら、「もうとっくに卒業した」みたいに答えていて、なんともユニークで面白かった。本好きと本嫌いの友人同士というのは別に不思議ではないんだけど、こういうところにも東京の自由さみたいなものがあるように感じました。硬直していないというか。変な住み分けがなくて、それは例えば僕が高島屋の化粧品店や宝石店の前をウロウロするのが許されるようなところにも言える。いやいや、高島屋での僕はかなり異質ではあっただろうな。

 やっぱり紀伊國屋書店新宿本店は僕の中ではナンバーワンの書店ですね。

 ちなみに今回は長濱ねるさんの「たゆたう」の文庫本をお買い上げ。

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