第14話 ドライアド討伐(1)

 ドライアドを探そうとは言ったものの、この広い森の中から特定のモンスターを探すのは少々骨が折れる。


 特にドライアドは日向を好む傾向にあるため、日陰だらけの森の中では見つけづらい。


 ミリネアに協力するとは言ったが、どうやってドライアドを探すか。



「大丈夫ですよ」



 俺が悩んでいるのを察してか、ミリネアが笑顔で言う。



「私のスキルを使えば簡単に見つかりますから」

「……え? スキル?」



 首を傾げてしまった。


 スキルを使うって、そもそもスキルは俺みたいな転移者かモンスターしか使えないモノじゃなかったか? 



「実は亜人の中にもスキル持ちがいるんですよ。全員が全員持ってるってわけじゃないですけど」

「へぇ、そうなのか。知らなかった」



 どういう理屈でスキルが使えるようになるのかはわからんが、この世界の人間以外の血が関係している……とかなのか?


 ミリネアみたいな亜人は、人間以外の血が混じっている感じだしな。


 しかし、亜人の冒険者ってあんまり見ないな。

 何か理由があるのだろうか。



「というわけで、ちょっとスキルを使いますね」



 意気揚々と、ミリネアが一枚の紙を取り出した。 


 何も書かれていない、白紙の羊皮紙だ。


 一体何をするつもりなんだろう──と思っていたら、真っ白の紙にじわっと何かが浮かびあがった。


 これは地図と言えばいいのだろうか。


 細かい線で周辺の障害物と地形が描かれていて、黒や白い星マークがいくつか点在している。



「ミリネア、それは……?」

「これが私のスキル、【マッピング】です」



 自慢げに鼻を鳴らすミリネア。



「私を中心に周囲数百メートルくらいの地形や存在する生物、鉱物、アイテムの位置を正確に表示させることができるんです」

「おお、それはすごいな」



 よく見ると、紙の中心に描かれている猫耳のアイコンが細かく動いている。


 それに、周囲に点在している黒い星マークもだ。


 猫耳アイコンがミリネアで、黒い星がモンスターってことかな?


 リアルタイムで位置を表示しているみたいだが、スマホの地図アプリ……いや、それ以上の機能だぞ、これ。



「この黒い星マークが生物で、白い星マークが鉱物やアイテムなんです。詳細を見たい場合はこうやって触れると……ほら」

「なるほど。名前が表示されるんだな」



 ミリネアが少し離れた場所にある黒い星に触れると「ゴブリン」の文字が出てきた。


 流石に俺の【解析】みたいに、対象のステータスまで表示はされないみたいだが、索敵には十分使える。



「こっちの星がトーマさんですね」

「へぇ、人間も名前がわかるのか……」



 と、そこで嫌な予感がした。


 この【マッピング】スキルが、何の情報を参照しているのかはわからないが、俺の名前が「トーマ」ではなく「イリヤ」で表示されはしないだろうか?


 【不正侵入】で名前は変えているが、姿は以前の俺のままだし。


 ドキドキしながら地図を見ていたが、紙に表示されたのは「トーマ」の文字。

 良かった。ほっと一安心。


 てことは、ステータスの名前の部分を参照しているのかもしれないな。


 冒険者証にも名前が自動的に出てるし、多分そうだろう。


 どこでどうやって情報管理をしているのかはわからんが、これも転移者が作ったシステムなのか?



「ええっと、ドライアドは……」



 ミリネアが付近にある黒い星マークに触れていく。


 だが、目的のドライアドは見つからない。



「……ん? これは」



 少し離れた場所に黒い星が固まっているのがわかった。



「ドライアドは集団で行動すると聞いたことがある。これは違うかミリネア?」

「……あ、すごい! ドライアドです!」



 ぱっとミリネアの顔が明るくなる。



「トーマさんもイリヤさんみたいにモンスターに詳しいんですね!」

「……あ、いや、そんなことはないぞ。たまたまだ」



 慌てて否定する。

 こんなところから正体がバレたら目も当てられないからな。


 しかし、この【マッピング】スキルというのは本当に便利だな。


 今度から討伐系の依頼をするときは、ミリネアに協力してもらったほうがいいかもしれない。



  

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