Ⅸ
「…昔話を聞いてくれないか」
「いいよ」
静かにただ頷いた。その態度は妙に心地が良かった。
それで心のつっかえは取れ、スラスラと言葉が出てきた。
「ちょっと昔、あるところに念力に目覚めた少年がいた。
またあるところに千里眼に目覚めた少女がいた。
二人は争いに巻き込まれた。宇宙人との戦いだ。
少年の能力は戦いに向いていた。あるもの全てぶつけていって沢山の宇宙人を殺した。
そのことに疑問は無かった。
元はと言えば奴らのせい。少年は奴らの事を酷く憎んでいた。
その憎しみを能力(ちから)に変え、少年は未来視の能力を持つリーダーの下で戦った。
少年の力は圧倒的だった。
だが、その少年にも代償はあった。
眼に映る全てを動かす力の代償は、少年の視力。
少年は次第にモノが見えなく、動かせなくなっていた。
しかし、そのころには少年には新たな戦う理由が出来た。
そう、千里眼の少女だ。
少女は直接戦闘に出ることは出来なかったが、常に周りに気を配り、皆を……少年を支えていた。
少年は、そんな少女を守りたいと思ったのだ。
沢山の仲間が死んでいく中、彼女だけは何としてでも、と思ったのだ。
そして、未来視のリーダーが自殺した日から、少年の想いは決意に変わった。
少女を守る。
それが少年の至上命題になった。
これまで以上に宇宙人を殺し、
無能な仲間—――人間すらも、殺してしまった。
そんな少年の姿を見て少女は悲しんだ。
だが、それでも良かった。
少女が生きている。
少女の命の鼓動が続いている。
それだけで少年は満たされていた。
…………………ああそうだ。
俺だって、彼女に苦しんででも、生きていて欲しかったんだ」
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