「…昔話を聞いてくれないか」

「いいよ」

静かにただ頷いた。その態度は妙に心地が良かった。

 それで心のつっかえは取れ、スラスラと言葉が出てきた。

「ちょっと昔、あるところに念力に目覚めた少年がいた。

またあるところに千里眼に目覚めた少女がいた。

二人は争いに巻き込まれた。宇宙人との戦いだ。

少年の能力は戦いに向いていた。あるもの全てぶつけていって沢山の宇宙人を殺した。

 そのことに疑問は無かった。

元はと言えば奴らのせい。少年は奴らの事を酷く憎んでいた。

その憎しみを能力(ちから)に変え、少年は未来視の能力を持つリーダーの下で戦った。

 少年の力は圧倒的だった。

だが、その少年にも代償はあった。

眼に映る全てを動かす力の代償は、少年の視力。

少年は次第にモノが見えなく、動かせなくなっていた。

 しかし、そのころには少年には新たな戦う理由が出来た。

そう、千里眼の少女だ。

少女は直接戦闘に出ることは出来なかったが、常に周りに気を配り、皆を……少年を支えていた。

 少年は、そんな少女を守りたいと思ったのだ。

沢山の仲間が死んでいく中、彼女だけは何としてでも、と思ったのだ。

 そして、未来視のリーダーが自殺した日から、少年の想いは決意に変わった。

 少女を守る。

それが少年の至上命題になった。

 これまで以上に宇宙人を殺し、

無能な仲間—――人間すらも、殺してしまった。

そんな少年の姿を見て少女は悲しんだ。

 だが、それでも良かった。

少女が生きている。

少女の命の鼓動が続いている。

それだけで少年は満たされていた。

…………………ああそうだ。

俺だって、彼女に苦しんででも、生きていて欲しかったんだ」


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