「!?え、ちょ、い、いきなりどうしたの!?」

気が付けば俺は、目の前の少女を抱きしめていた。

「だ、だめだって、こんなにひっついたら!ふじゅんいせーこーゆーだよ!」

嫌なことを思い出したからなのか、自分でも良くわからない。とにかく今は少女を離したくなかった。

また、いなくなってしまいそうで。

ナニカ失ってしまいそうで。

カラッポになってしまいそうで。

 「と、とにかく!一回離れて!一回だけ!」

「……悪い」

少々落ち着きを取り戻し少女から離れる。

「ま、まったく、私に甘えたいんならそう言ってくれれば良かったのに。

そんないきなり抱きついたりなんかしたら、モテないよ」

「……悪い」

「…」

 しばし沈黙が続く。お互いに何を言えば良いのか分からない。

「……ごめん」

先に言葉を発したのは少女の方だった。

「後遺症の事、キミに何があったのか良くも知らずに軽々しく口に出し過ぎだよね…ほんとごめん…」

「お前は悪くない。悪いのは俺だ」

 そう悪いのは俺だ。俺がすべて悪い俺だけが悪い。

彼女はここにいる連中とは違う。そう、思い込んでいた。

あの太陽の如き笑顔なら、俺を救ってくれると勘違いしていた。

そして、自分だけ被害者面して、ただ逃げようとして。

そして、











 また、逃げた。

気が付けば何時もの病室に戻っていた。

あの後少女とどんな会話をしたのか、どうやってここに戻って来たのか、覚えていない。

昼食はなぜだかまだ残っていた。

気を紛らわす為にそれを掻き込む。

いつもと変わらない、味気ないはずの食事。

だが、不思議と今日の食事は少ししょっぱかった。


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