Ⅲ
「定期診断は以上です。特に異常はありませんね」
「…………」
退屈な定期検査を受け終わり、担当の先生と向かい合う。
「リハビリも兼ねて元気に歩き回ってくれるのは結構ですけど、診断の時間は守ってくださいよ」
「先生」
どこかやつれた先生に俺は一つ質問を投げかける。
「俺たちはいつになったらここから出られるんですか」
「……」
急な質問に少し戸惑ったが、それでも先生はすぐに答え始めた。
「………ごめんなさい。それは、まだ分かりません。
私たちも早く退院させてあげられる様に努力しています。それだけはわかってください」
まあ予想通りだ。
いくら既に能力を失っているとはいえ、人とは違う
そんなものが一般社会に解き放たれることの恐怖は、想像に容易い。
「そうですか、なら、今の外の様子はどうなっているんですか」
「…すみません。それも言えないです」
これまた予想通り。
戦いは元凶である奴ら……宇宙人との和解で終結したと聞いている。
なれば、世界の混乱はあって然るべきだ。
もっとも、その混乱はこの病院にまでは届いていないが。
「何も言えずにごめんなさい。
でも、あなたが外の事に興味を持ってくれたのは嬉しいです」
「?」
「悲しいですが、この病院には未来を諦めている人が大勢います。
でも私はあたたたちをきっと元の生活に戻して見せますよ」
そう力強く語った先生の姿は妙に印象に残っていた。
未来、か。
確かにらしくなかったかもしれない。
検査の帰りに一人考える。
それは、いったいどんなものなのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます