第38話 無害なストーカー
「今から凛音が参加する競技だね」
「先輩の活躍が楽しみだなぁ」
「凛音なら余裕で1位取っちゃうよ」
「吸血鬼だからね」
「こらっ、大きな声でそんなこといいません」
「陽美はこっちこないのかな」
「陽美は友達めちゃくちゃ多いし、そっちと一緒にいるのかな」
「陽美は1年生だけなら友達じゃない人の方が少ないからね」
「コミュ力お化けだよね」
「ねー」
「そろそろリレー始まるね」
「先輩は何走なの?」
「アンカー」
「あの人なら絶対1位取ってくれるよね」
「凛音だからね」
リレーのスタートを切る1走がスタートラインに立った。
先ほどまでテントから聞こえてきていた人の声は今の緊張感によって静まり返っている。
スタートの位置からピストルの音が鳴り響き、リレーはスタートした。
凛音はアンカーなので活躍を見るにはまだしばらく時間がかかる。
「先輩のチームってあれ?」
「うん」
「ちょっとやばそう?」
「……いや、凛音なら絶対大丈夫」
凛音のチームの第一走は少し、いや、かなり前の2チームと距離が離れている。運動神経があまりいい方ではないのだろう。
結局1走は他の2チームと大きく距離を開けて次の走者にバトンが渡った。
「2走は……誰だろう」
「私も知らない人」
このリレーの2走はこの私、南条綾が担当している。まだメンバーが完全に決まっていなかった時、1走の人に足が速いイメージが無かったのでこのリレーを希望した。
やっぱり朝倉さんには春香ちゃんに良いところを見せる機会を与えてあげたい。
私は朝倉さんの友達として、そして2人のストーカーとしてここで全力を尽くす。
「2走の人、なんか速いね」
「陸上部の人だったりするのかな」
「あの人も先輩みたいに吸血鬼だったりして」
「まさか~。吸血鬼って相当数少なそうだしあり得ないでしょ」
「はあっ……はあっ」
バトンを渡す直前にはもう既に体が悲鳴を上げていた。
走る速度はなかなかのものだったが、普段ろくに動いてないせいで私には持久力が全然無かった。
次の走者にバトンが渡るまでにかなり前との差は縮まったが、追い抜くまでは至らなかった。
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