第32話 解決案を考えよう
「春香、昨日はホントにごめんな」
「いいよ、もう気にしてないから」
気にしていないは流石に嘘だ。あんな衝撃的な事がそう簡単に意識の外に放り出すことは出来ないのだろう。
「原因は分かったの?」
「春香の血に強烈な依存性があるかららしい」
「依存? 私の血に?」
「ああ、私は春香の血に依存しているようだ」
「昨日の衝動もそれのせいなの?」
「おそらくな」
「なあ、春香」
「ん?」
「もう……別れないか?」
「えっ……」
突然切り出された別れ話を脳が処理できず、というより処理を拒み、脳がフリーズする。
「何で……そんな事……」
「またあんな事やったら、今回のようにはいかないかもしれないだろ……」
「でも……私は凛音と別れるのが寂しいよ」
「私だって寂しい」
「別れるの嫌じゃないの?」
「嫌だけど……春香を傷つける方がよっぽど辛い」
「……」
何も言葉を返すことができない。まだ脳の処理が追いつかない。まるで、無○空処でも喰らったような気分だ。
「な、何とか一緒に居るままにできないの?」
「依存性のある血はかなり珍しいみたいで私の両親も対処法を知らなかったんだ」
「じゃあまだ別れる判断を取るのは時期尚早じゃ……」
「でも、何か変えないとこの現状を解決する手段は見つからないんじゃないか?」
「だとしても別れるは話飛躍しすぎだよ」
「それも……そうだな。じゃあどうする?」
「……今日1日だけ、とりあえずそれでいいんじゃない?」
「そうだな。別れ話はまだ早すぎたな」
凛音の目にじんわりと滲んでいた涙が引っ込んでいった。
とりあえずこの場は乗り越えられたと言えるだろう。
「1日だけだって自分に言い聞かせても寂しいな」
「うん、寂しいね」
「これでなにも起こらなかったら、私達本当にわかれちゃうのかな」
「考えたくない」
「そうだよね。ごめんね、凛音」
他に手段が無いからということで1日だけ距離を置く事になったが、たった1日で効果があるとは私には思えない。
凛音も薄々それは理解しているのだろうが、やはり寂しいのだろう。
そういえばあの時、私が素直に吸わせたから良かったけど、私が血を吸わせなかったらどうなっていたのだろう。
あの時の凛音は完全に正気を失っていた。
最悪の場合、私は凛音に殺されてしまうのでは?
とにかく色々試してみよう。後、凛音がまた衝動に支配された時は血を吸わせてあげよう。
私が凛音のために出来ることといえばそれくらいしかない。
生徒玄関で別れる直前、寂そうな顔をした凛音の頭を撫でながら凛音に語りかけた。
「絶対、大丈夫だからね」
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