第28話 体育祭の練習
私が通う高校では、体育祭の1週間前、つまり今の期間は授業が無い。
夏休みが明けてから1週間しかないので時間を確保するためなのだろう。
朝のホームルームが終わったらすぐに体操服に着替えて運動場に出なければならない。
まだ9月に入ったばかりでとにかく暑い。
日の光に刺されているような感覚になる。
「春香、さっき振りだな」
「凛音~。暑い~」
「そう言われても私にはどうにもできないぞ」
「吸血鬼って魔法とか使えないの? 氷出してよ~」
凛音に抱きつきながら質問する。
「無理だ。昔の吸血鬼は使ってたっていう伝承も多分話盛ってるだけだぞ」
「歴史ってのは時間をかけて盛られていくものだからね」
「後、暑いっていうなら離れたらどうだ? それで少しはましになるだろ」
「凛音は離れて欲しいの?」
凛音はその質問には首を横に振って答えた。
「暑いから離れるけどね」
「そうか……」
ちょっと寂しそう?
前に私が凛音を甘やかした時、凛音が私から離れていくとちょっと寂しい気持ちになった。
凛音も今、あの時の私と同じような気持ちなのだろうか。
「ほら、私たちのチームは向こうだ。一緒に行くぞ」
凛音が私の手を握ってリードする。
「怪我とかしないようにな」
「まあしないだろうけど、一応凛音も気をつけてね。愛しの彼女に何かあったら私、悲しいから」
「ああ、気をつけとく」
まずは、自分が参加する競技、そして競技毎の並ぶ場所の確認からやっていくようだ。
私は学年毎のリレーの3走を担当することになっている。
できれば個人で走るやつの方がよかったのだが。
私は運動神経が悪い。
それでリレーのメンバーに迷惑かけるのも嫌だし、何より責められたくない。
それでもリレーを我慢しているのは、凛音が応援してくれるからだ。
凛音の運動神経の良さは2年生の中では結構知られているようで、2つの競技に出なければいけないそうだ。
凛音は優しいから断れないもんね。
凛音が応援できるタイミングであることを考えて渋々、リレーを受け入れた。
他の競技だと凛音がテントに居なくて応援できないようだ。
練習でも走らないといけないんだよね。
地獄だ。
私みたいな人間にはとにかく体育祭は地獄と等しい行事だ。
毎年この時期がやって来ると、体育祭を始めた人へ心の底から殺意が湧いてくる。
でも、体育祭を乗り越えれば皆が楽しみにしている文化祭がある。
そう思うと、中学の頃よりは気持ちが楽になってくるものだ。
「これで自分の場所は覚えましたね。じゃあ早速1本走ってみましょう」
え、走るの? 普通に嫌なんだけど。
こういう無駄に元気のある教師。
普段は別になんとも思わないけど、こういう時は本当に無理。
早く凛音に会いたいよ~!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます