第24話 甘々な時間

 「私のこといっぱい甘やかしてくれないか?」

「……」

上目遣いで抱きついてくる凛音。

無理無理、私が尊さで死んじゃう。

可愛さがカンストしてる。

凛音は私よりも背が高く、凛音に見上げられたのはこれが初めてかもしれない。

それがまた、可愛さに拍車をかけていた。


 異変を感じて、私の胸に耳を当ててきた。

「何か鼓動速いぞ。大丈夫か?」

誰のせいだと思ってんだよ!


 抱き締められたり、頭撫でられたりした時も嬉しそうな反応してたけど、あの時も本当はこれくらい甘えたかったのかな。

ということは、あの時は反応を抑えるのを忘れてたんじゃなくて、全力で抑えてあれだったと言うことなのか。


 でも、甘えん坊な凛音もすごくいい。

こんなになるまで凛音を甘やかしてくれていた凛音の両親には心から感謝しないとね。


 「よーしよしよし」

片方の手で凛音の抱き締め、もう片方の手で頭を撫でる。

「ふふん」

「凛音可愛いーーー!」

気持ちが抑えられず、声に出てしまった。


 「はあっ!? 急に何だ。……恥ずかしいだろ。そんなこと言われたら」

「気持ちが抑えられなくてつい……」

「別に抑えなくていいぞ。今ここにいるのは私たちだけなんだから。まあ、言われる側はちょっと恥ずかしいけど」

「じゃあ、これからはいっぱい凛音に可愛いとか、好きとか、言うね」

「恥ずかしいからできれば2人の時だけにしてくれよ」

「ええ~、学校でもいっぱい言おうと思ったのに」


 「春香は他人にはとにかく陰キャだけど、仲のいい人間にはぐいぐい来るよな。出会ったその日に私を家に誘った時点でそう思ってた」

「楽しいからね、仲のいい人にぐいぐい行くのは」

「その気持ちは分からなくもないかもな」


 30分ほど経って、ようやく凛音が私から離れた。

体が一気に解放された感じだが、凛音の温かさが離れていって少し寂しい。


 「そろそろ体育祭だな。春香は体育祭嫌いか?」

「嫌いか? って聞いてくるってことは、答えは分かってるんだね」

「ああ、春香は運動苦手そうだしな」

「うん、大っ嫌い。でも、凛音は運動好きそうだよね」

「私は運動はできる方だが別に好きなわけじゃない。嫌いでもないけど」

「凛音は運動できていいなあ」

「私は吸血鬼だからな」

「本当便利だね、その言葉」


 「私が鍛えてやる、と言いたいが春香はそれも嫌なんだろうなあ」

「うん、嫌。でも体育祭の練習で授業無くなるからその面では好きかな」

「それは私も同感だ」

「でも私、文化祭は大好き」

「私も大好きだ」

「お互いのクラスの出し物決まったら情報共有しよっか」

「ああ」






 今は午後7時、凛音が帰る時間だ。

「また前みたいに泊まれたら嬉しいんだがな」

「そうだね」

「じゃあ、また明日」

「うん、またね」

お互い手を振って、別れの挨拶を告げた。


 










 


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