第23話 両親と毒の話

 「今日の勝率は10%ってところだな」

「悲惨な戦績だね」

「春香が手加減してくれないからだぞ」

「それもそうだね」

「ふふっ」

「あははっ」


 こうして下らない話をしている時間がとても楽しい。

凛音と一緒にいると何もかもが楽しい。

あの日、凛音と会えてよかった。

2人で笑っている時、いつもそんなことを考えている。


 「そういえば前に血を吸った日のこと覚えてる?」

「ああ、絶対忘れないぞ。あの日は初めて春香の家に泊まったからな」

「凛音に血を吸われるのが気持ちいいって感じるあれ」

「それがどうかしたか?」

「何でそんな風に感じるのかなって思って。凛音は何か知ってる?」


 「それ、私の毒だぞ」

「ど、毒!?」

「私……というか吸血鬼の牙からは毒が出せるんだ。毒と言っても、体に害があるわけじゃ無いけどな」

「その毒のせいで気持ちよく感じるの?」


 「吸血鬼の毒は興奮、鎮痛、治癒の促進効果がある。毒の効果の強さは吸血鬼側が自由に調整できる」

「じゃあ凛音が意図的にやってたの?」

「いや、最近親から教えられた。私は無意識に毒の興奮作用を強くしていたんだ」


 無意識に毒を使ってたって、ちょっと恐ろしい。

体に害の無い毒で良かった。


 「だからこれからは意図的に春香を気持ちよくさせられるぞ」

「言い方ぁ! 完全にやばい人だよ」

「そうか?」


 「凛音の両親かあ。私も会ってみたいな」

「そのうち機会があればな」

「凛音の両親ってどんな人なの?」

「いい人」

「それだけじゃよく分からないよ~」

「……優しい」

「抽象的すぎ」

「うーん、難しいな。何と表現すればいいのか私には分からない」

「凛音は言葉で表現するのが苦手なんだね」

「関係の深い人を言葉で表すのって難しくないか?」


 「春香の親はどんな人なんだ?」

「ちょっと過保護気味な人……かな」

「私の親もそんな感じかもな。私は吸血鬼だから周りにバレないようにしないといけない分、どうしてもな」

「今の関係はどんな感じ?」

「毎日のようにメールし合ってる」

「確かに過保護っぽいね。私はそこまで頻繁にメールしたりとかは無いけど、関係は良好かな」


 「これ、家族と撮った写真だ」

凛音がそう言って、私にスマホを向けてくる。

「おおー、家族もすごく顔整ってるね」

「吸血鬼だからな」

「その言葉便利だね」


 「なあ、春香」

「うん?」

凛音がいきなり抱きついてくる。

「うおっ、どうしたの急に」

「私はたくさん甘やかされて育ったからな。何と言うか、春香にも甘えたいなって」

「えっ?」








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