第17話 約1ヶ月の我慢

 2人でたくさん遊んでそろそろ夕食の時間がやって来る。


 「そういえば、凛音って私の料理食べたことあったっけ?」

「前の卵焼きと今日の昼食だが、2人で作ってたから春香の料理と言えるのか微妙だな」

「じゃあ、私が凛音にとっておきの料理を作ってあげる」

「それは嬉しいな」

「凛音はゆっくりしててね」

「ああ」


 キッチンに入り、料理の準備をする。

凛音は椅子に座ってこちらをじっと見つめている。

「そんなに見つめられたらちょっと恥ずかしいよ」

「そうか、すまん」


 凛音は謝ったが、私を見つめるのをやめようとしない。

たとえ相手が凛音でもこれだけ見つめられると結構恥ずかしい。


 逆に私が凛音を見つめ返すと凛音は視線をそらし、スマホを触り始めた。

でもチラッと時々こちらを見てくる。

何がそんなに気になるんだろう。


 「何でそんなに私を見つめてくるの?」

「……血」

「ん?」

「血が吸いたい」

「そういえば、最近全然吸ってなかったね」

「7月29日が最後だった」

「じゃあ今日の寝る前とか?」

「分かった。それまで我慢する」


 あんまり血を吸ってなくてちょっと子供っぽくなってる凛音も可愛い。


 でも逆にこれまでよく我慢してたね。

いつの間にか期間が空いちゃってて言い出しにくかったのかも?


 「これまで何で我慢してたの?」

「ちょっと最近、血を吸いすぎたかなって思って。春香の体に負担かけたくないし……」

もじもじしながら凛音が答えてくれた。


 私の体を気遣っての事だったんだね。

「料理できるまでどれくらいかかる?」

「20分くらい」

「ちょっと散歩してくる」

「いってらっしゃい」

「いってきます」


 凛音は振り返って笑顔で手を振ると、玄関へ向かっていった。

出会ったばかりの時はあんまり表情の変化が無かったけど、今はよく笑うようになっている。

凛音は元々、友達が少なかったようだし、表情筋を使う機会があまり無かったのだろう。


 私も笑顔で手を振って、凛音を送り出した。


 財布とスマホだけを持って、ドラッグストアへ向かう。


 さっきスマホを触っていたのは、貧血の対策について調べていた。

鉄分を取るというのが一般的だが、どのような手段で接種するのかよく知らなかった。


 先ほど調べた限りでは、鉄分サプリというのが良さそうだった。

思春期は鉄分が不足しやすいらしいしちょうどいいな。






 「ただいま、春香」

「おかえり、凛音」

凛音が何か薬の袋のようなものを持っていた。

「これ、鉄分サプリだ。私が血を吸うせいで鉄分不足してそうだしな」

「これを私のために? ありがとう」


 凛音を抱き締める。


 「ちょうどご飯できたし、一緒に食べよ」

「あ、ああそうだな」

凛音が頬が赤く染めながら答える。


 凛音、ハグに弱すぎる件。










 




 


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