第13話 2人で花火大会 その2

 「いっぱい屋台並んでるね~」


 「どこに行くんだ?」

「やっぱり屋台と言えば焼きそばでしょ」

「焼きそばか、焼きそばの屋台はここからじゃ見当たらないな」

「じゃあ一緒に探しに行こっか」


 2人で屋台を回っていく。

焼きそばは人気だろうしすぐに見つかるだろうと思った。

だからこそ見つからないであろう奥の方から探している。


 私は凛音とこうして歩いている時間が楽しい。

この時間がずっと続いて欲しいと思ってしまうほどにはね。


 「お、結構目立つところにあったな」

「そうだね、奥から探したのはちょっと失敗だったかな」


 2人で焼きそばを買い、食べながら歩く。


 「うーん、美味しいね」

「屋台の食べ物はなぜこれほど美味しいと感じるのだろうな」

「屋台があるのってイベントの時だけだしワクワクしてる気持ちがあるからじゃないかな」

「確かにそうかもしれないな」


 なんてことを話しながら砂浜の方へと向かっていく。


 「砂浜の方まで来て何するんだ?」

「ここで海をバックに浴衣の凛音の写真を撮りたいなって思って」

「いいぞ」

「それじゃそこに立って」

「準備できたぞ」


 海をバックに立つ浴衣姿の凛音。

すごく映える。


 「はいチーズ」


 「次は私と春香の2人で撮らないか?」

「いいね、やっちゃお」


 2人で肩を組みスマホを斜め上に上げて自撮りする。


 また一つ、写真フォルダに思い出が刻まれた。


 「しっかり撮れてるよ」

「後で私にも送って欲しい」

「了解」


 色々雑談しながら焼きそばを食べて時間を潰していた。


 「もうそろそろ花火上がるかな」

「もう8時直前だな。そろそろだろう」


 花火が上がるのを今か今かと待っていると、海の方からヒューと音が聞こえてきた。

花火が上がる音だ。

やっと花火が見られる。

凛音と一緒に。


「うわあ綺麗だな~」

「花火は美しいものだな」


 2人で真っ黒なキャンバスに咲く芸術を見上げる。

花火はやっぱり何度見ても飽きない。


 凛音もきっと昔は家族でこうして花火を見に来ていたのだろう。

私もそうだ。

いくつになってもこうして花火を見に来る。


 老若男女全てのの人間が楽しめる花火は世界に誇れる日本文化だろう。


私の口ぶりからわかるかもしれないが私は花火が大好きだ。

いつか一緒に行ける相手が出来たら絶対にその人とも行ってみたいと思っていた。


 「今日は来て良かったぞ。久しぶりにこうして花火が見られて良かった」

「私もだよ」


 そして花火を見ている間にお互いが無意識に距離を詰めていた。


 凛音が私の肩に手を置いている。

また少し、凛音との距離が縮まった。

距離を縮めてくれた花火大会には感謝しなくちゃね。













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