第8話 終業式の日に

 1学期の終業式を終えた帰り

「明日から夏休みだね」

「ああ、ようやくだな」

「早速だけど今日私の家で遊ばない?」

「遊びたい」

「それじゃ午後からね」

「了解」





 午後、凛音が私の家にやってきた。

「おじゃまします」

「いらっしゃい、凛音」

「ところで今日は何をするんだ?」

「……ゲームやる?」

「やる」


棚の中からコントローラーを2つ出してくる。

「レースゲームやってみよっか」

「面白そうだな」


 ゲームを起動して凛音に説明していく。

「自分が使うキャラと車のカスタムをここでするんだよ」

「なるほどな、やってみる」

凛音がコントローラーを操作してカスタムしていく。

「できたぞー」

おそらく見た目だけで選んだのだろう、私でもまともに操作できないレベルの悲惨なカスタムになっていた。

「凛音、これじゃ多分上手く操作できないよ」

「そうなのか、どごがダメなんだ?」

「このボタン押すとカスタムのステータスがでるんだけど、これ性能が片寄りすぎてるんだよね」

「スピードは高いが他がダメなんだな」

「私が凛音でもプレイできるカスタムにするね」

「助かる」




「アクセルはこのボタンでブレーキはこのボタン、ドリフトはこのボタンだよ」

「ふむふむ」

 操作方法を説明した後、コースを選びレースを開始する。

「ようやくスタートするのか」

「私に勝てたら血吸っていいよ」

「本当か? それは負けられないな」

凛音は結構しっかり操作できていた。

血が吸えるというのもあってかなり本気なのだろう。

「うお、ここは曲がりきれないぞ」

スピードマックスで急カーブに入った凛音がコースアウトする。

今凛音を見ているとカーブを曲がるとき、凛音の体も一緒に動いている。

こういうのってレースゲーム初めてやる人には結構あるあるらしいと聞いたことがあったけど本当だったんだね。

可愛いから指摘しないでおこう。



 1回目のレースの結果は私の勝利だった。

凛音もよく頑張ったがさすがに私にはかなわなかったみたいだね。

どこか適当なところで負けて凛音に血を吸わせてあげることにしよう。




 その後何レースかして私が凛音に負けてあげた。

どんな反応するかな。

「勝ったぞ、やっと勝ったぞ! これで血を吸わせてくれるのか?」

誕生日やクリスマスにプレゼントをもらった小学生のように喜ぶ凛音。

こういうのが見たかったんだよ私は。

「うん、凛音が勝ったからね」

そう言って肩を出す。

「それじゃいただきます」

何だか前よりも気持ちよくなってるような気がする。

「んっ……」

少し声が漏れる。

その声を聞いた凛音が口を離した。

「痛かったのか?」

「いや、大丈夫だよ。ちょっと気持ち良かっただけ」

「前に言ってたあれか」

「そうそう、だから気にしないでいいよ」

「そうか、じゃあ遠慮なく」



 今日はいつもより多く血を吸われた。

血管から血を吸われているのに痛みを感じない。

むしろ気持ちいい、もっと吸って欲しいって思うくらいには。

出会った日、凛音は人間に混ざって生きられるよう進化していると言っていた。

また血を吸わせてもらえるようにする吸血鬼の工夫なのかな。











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