大悪魔システィーナは誰も救わないのか?
当然のように人々は逃げ惑い、逃げ遅れた者は捕まって暴行された。
「た、助けてくれ」
「うるせ〜! 知らね〜!」
つい先日の夜、システィーナから似たようなことをされたばかりだった友梨那は目の前で行なわれる暴虐を許せない。
彼女を突き飛ばし助けに向かおうとするが、不機嫌そうな彼女に腕を掴まれる。
いきり立ったまま振り向いたが、「ムキになるなって」と、鼻で笑われた。
「……いるよねー。いつの時代にも。ああやって悪魔の餌食になっちゃって、無駄死にしちゃうのよ」
「助けたいって思わないの?」
「そんなことして、あなたの得になるかしら? 勝手にケンカ売って死ねば……」
「こんな時でも契約してくれない限り〜って言うわけ?」
優しさなど持たない冷酷な口調と声色で見捨てようとしたシスティーナだが、友梨那の考えは揺るがない。
システィーナにはその勇気が鬱陶しかった。
なので……イラつきながら、つぎにこう問いかけた。
「だったら?」
「金輪際あんたには関わらないからね。友情もここまで。あんたみたいなね、くそったれ悪魔のことなんて、記憶の彼方からも消し去ってやりたい!」
「はははは……。記憶に残してくれたんだ、そっか〜。嬉しいなーっ。でもあんな小鬼どもだって、あなたじゃ倒せっこないわよ」
「やってみなくちゃわかんないじゃない……!?」
荷物を置いた友梨那は、その辺に落ちていた木の枝を拾ってゴブリンとインプたちに挑まんと向かう。
ショッピングして買ったものを無下にはできないシスティーナは、最初は友梨那が無様にやられて惨めに死ぬところを見物してやろうとさえ思ったが……。
「待ちな!」
友梨那が必死な形相で力を持たぬ者なりにゴブリンたちに戦いを挑み、襲われていたパフォーマーを助けるのを目の当たりにしたシスティーナは……黒々と輝く魔力のオーラを発すると、コントロールが下手くそなりに、友梨那が買ってくれたものをどこかへと転送する。
「あたしもね、せっかく見つけたおもちゃを……失礼、ベストフレンド、でもなくて! 眷属候補をむざむざ死なせるほどバカじゃないわよ」
「ケヒャヒャ、キヒャーッ!」
想像以上の力で友梨那に殴られ、片目が潰れたり青あざができたりなどしていたゴブリンたちは唐突に興奮し出す。
加勢にきたシスティーナが魅力的だったからなのかは、定かではない。
「ウヒヒヒヒ! 誰かと思ったら、公爵家のお嬢さんじゃあねーか。カモがネギ背負ってやってきたぜ」
変装または擬態を解いて、ボンテージ衣装の悪魔の姿に戻ったシスティーナはゴブリンのうちの一匹を踏みにじり蹴飛ばした。
「ウヒャ……う、ウヒ、うっ……ぐえっ」
「こいつら、あんたのお仲間じゃないの。何のつもり……」
うめくゴブリンを前に友梨那は訊ねたが、システィーナは片手をかざして静止させる。
「【サードクラス】のゲスヤロウども。お前たちの狙いはあたしでしょう」
「俺たちゃ、あんたのファンだが!? あんたのお父ちゃんとお母ちゃんには、恨みがあるんでねーッ」
階級らしき単語を口にした刹那、今度はインプの顔を回し蹴りで切断。
黒く爆発四散して消え去ったので、ほかのゴブリンたちは逃げ出したが、両手から紫色や緑色のエネルギーの粒子を飛ばしこれまた爆発燃焼させる。
驚く友梨那を尻目に、次は指先から光線を放ちインプを貫いた。
「何よ。自分の身くらい自分で守れる!」
「結構なことね。今回だけのサービスよ」
強気な友梨那に対し突き放すような事を言った後、尻尾をムチがわりにまだ残っていたゴブリンとインプをかわるがわる打つ。
「あ、アニキーッ! いやオジキ! こいつらですッ! 公爵の娘と悪魔化させられてたガキですっ!」
友梨那に手掴みされ、にらまれていたゴブリンの一個体が大慌てで叫ぶ。
大きな足音とともに、何者かがゆっくりと迫りくる……!
「ちょっと顔貸してもらおうかい」
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