第12話 パーティーの危険性
ようやく、この世界の在り方が分かってきた気がする。おそらく、俺はこの世界の誰かをモデルとした身分を与えられて、この世界に生まれ落ちるのだろう。そして、死んでしまうと、異世界転生をした日に戻ってきて、また異なるモデルの身分を与えられるに違いない。
何とも面倒な話だ。もしかして、これが俺が異世界転生するにあたって、与えられた能力なのだろうか。どうせなら、転生するときの身分は選ばせて欲しかった。前回の貴族はかなり当たりで、今回のチンピラは結構はずれだ。どうして、死んでしまったのか、死ななければ貴族のまま過ごせたのに…。
そんな事を考えて、重大な事実に思い至る。自分の事ばかりで、気が回っていなかったが、このままでは、またパーティーであの惨劇が繰り返される。
マルズをパーティーに行かせる訳にはいかない。
「マルズさん!二日後のパーティーに行っちゃ駄目だ、ブライズさんにも行かないように伝えて!」
思っていたよりも、大きな声が出た。それだけ、必死なのかもしれない。あのパーティーに参加すれば間違いなく死ぬ。止められるなら、止めなければ。
「何を言っているのですか。あんたには関係のない話でしょう。」
「うまく説明できないけど、そのパーティーは危険なんだ。行ったら絶対に後悔することになる。」
「何故、危険だと分かるのですか。そんな話信じられるわけないでしょう。それとも、まさかあなたがパーティーに何かするのですか?」
「冗談じゃない!あんな事…っ。」
マルズは当然のように説得を受け入れてはくれない。思考を巡らせ、何とかマルズを説得できる言葉はないかを探る。
…ない。どう説得しようとしても、俺がパーティーに危険が訪れることを知っている説明ができない。
どうしようもない気分で立ち尽くしていると、マルズは別れの言葉を口にした。
「これ以上、何もないようでしたら、私はこれで。一応、私もこれからやることがありますので。」
そう言って立ち去るマルズを、俺は引き留める事ができなかった。
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