第11話 時間が巻戻ってる件

「マルズ…さん、もしかして、マルズさんは二日後の夜にパーティーに出席する予定があったりしない?」


 この質問で、おおよそこの状況を把握できるだろう。


 本当に、タイムリープしているのか。


 そもそも、マルズは俺が貴族でなくなった今、何をしているのか。メイド服であることから、誰かに仕えているであろう事は推測できるが。


 そして、誰かに仕えているのなら、前回の世界の流れを汲むように、パーティーが開かれ、それにマルズが従者として参加するのか。


 マルズの答えで、どの推測が正しく、どの推測が間違っているのかが分かるはずだ。


「どうして、それをあなたが知っているんですか?その話は、参加者にしか知らされていないはず…。」


 マルズの顔が険しくなった。俺の存在がマルズの中で、明確に怪しい相手へと変化したのを感じる。しかし、これで確信した。先程の俺の推測は、全部正解だ。時間が戻っているし、マルズは誰かに仕えていて、前回と同じようにパーティーに参加する。


 だとしたら、ここでマルズに疑われるのは良くない。まだ、聞いておきたいことが残ってる。


「え?そうなんだ、そんな重要なパーティーじゃないはずなんだけどな…。精々、自分の友達を招待するように俺が身内で企画したパーティーなんだけど、マルズさん綺麗だから、誰か誘ってたりしないかなって。」


「…そうだったんですか、すみません私の勘違いみたいで、そのパーティーに私が参加することはないと思います。」


「そうなんだ、残念だな。」


 とりあえず、何とか誤魔化せたか。後は、俺が貴族でなくなった分、どうやった帳尻がを合わせているのかだが…。


「マルズさんって、見た感じ誰かに仕えてそうな感じだけど、それってもしかしてこの町の偉い人?」


「ええ、私は、この町の貴族である、ブライズ様に仕えています。」


 なるほど…。ブライズさんというと、前回の世界のパーティーで遭遇した、ドワーフの貴族である。つまり、マルズは俺が貴族でない世界でも、俺と同等程度の貴族に仕えているのか…。


 いや、逆だな。俺が、イレギュラーなんだ。マルズは、元々ブライズさんに仕えていたのだろう。それが、俺が貴族になるということで、俺に仕えることになったに違いない。できるだけ、齟齬を少なくするために、俺にはブライズさんと同じだけの地位を与えられたのだろう。要するに、貴族だった俺はブライズさんの模倣だったのではないだろうか。

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