第7話 貴族令嬢との出会い

 再び、食事を取る使命へと戻る。食べ放題とかに行くと、もったいない精神で、必要以上に食べてしまう性分である俺は、ここでもその性分を遺憾なく発揮していた。


 しかし、ただ無心で食事を続けられるはずもなく、アブラスさんのように何人かの人物が声をかけてきた。


 その誰もが、この町では欠かすことのできないほどの有力者であった。これで、俺のパーティーの人選に関する予想は、ほぼほぼ的中していると考えて良いだろう。


 位の高い人たちと会話をするだけでも疲れるのに、自分の正体がばれないように苦心しないといけなくて、すでに俺の精神は限界に達しようとしていた。正直、もうお腹いっぱい食べたし、そろそろ帰っても良いんじゃないかと思い始めていた。


 最低限の務めは果たしたのではないだろうか。今帰っても、誰も気を悪くしないよなと、そう思いながら、周りを見渡すと、一人の女性と目が合った。


 その女性はピンク色の髪を長く伸ばしていて、綺麗な人だった。


 彼女は、何かを探すように、辺りを見渡していたため、ちょうど同じように辺りを見渡していた俺と目が合ったのだ。


「シュートさんですよね。シュートさんも誰かを探しているんですか?」


 目が合ったなら声をかけられる。それは、このパーティーで学んだことだった。しかも、同じように捜し物をしているように見えたのなら、協力できないかと思われても仕方が無い。実際は、帰りたいがために周りの様子を伺っていただけなのだが。


「いや、そういうわけじゃないんですが、君は誰か探してるんですか?」


「そうなんです…。あ、もしかして私の名前知りませんでしたか?私は、ルリノア・スヴェールと言います。」


「ああ、ルリノアさんね。」


 名前を知らなかったことについては不審に思われなかったらしい。


 ルリノアさんか…。名字があるみたいだし、貴族の方だろうか。よく見てみると、細かい動作の一つ一つに品があるような感じがする。困っている姿さえ、絵になっている。

 

「あの、それでは、アブラスさんとイディニアさんとブライズさんを見かけませんでしたか?この会場のどこにも見当たらなくて…。」


 アブラスさんは、最初に話をした将軍の方で、イディニアさんは確か、このパーティーの主催者で金髪の人物だったか。ブライズさんは、ちょっと前に挨拶だけ交わした、ドワーフの貴族の方だ。


 確かに、会場をざっと見渡してみるとその三人の姿が見えなかった。

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