第6話 将軍との出会い
「これは、これは、シュート様ではないですか。お元気ですか?」
始めに声をかけてきたのは、妙にがたいが良く、威厳たっぷりに口髭を生やした、三十代くらいのおじさんだった。こそこそと陰の方で食事を取っていたのに見つかってしまった。
というか、このおっさんは何で俺の名前を知ってるんだよ。これも俺が異世界に来て現実が改変した結果だろうか。
「お久しぶりですね、あの時以来でしょうか?」
鎌をかけてみる。このおっさんが、俺の名前を知っていたように、もしかしたら俺の過去も知っているのではないだろうかと期待して。
「そうですな。あの時…あの時とはいつでしたかな?すみません、忘れっぽいもので。」
やっぱり、このおっさんも俺の過去のことは知らないらしい。いちいち確認しないでも、俺の過去のことを知っている人なんていないのだろう。
「はは、大丈夫ですよ。それで、お手数なのですが、家の従者に自己紹介していただいてもよろしいでそうか。私の方から説明して、無礼を働いてもいけないので。」
少し苦しいが、マルズを使って、相手の情報を探る。
すると、おっさんは気にした風もなく、俺の言葉に従ってくれた。
「私は、アブラスと申します。一応この町の将軍を務めています。今後ともよろしくお願いします、お嬢さん。」
そう言って、アブラスさんは腰を折った。…想像以上に偉い人だった。心の中で、おっさんと呼んでたことを申し訳なく思う。
「私は、シュート様の従者を務めているマルズと申します。こちらこそよろしくお願いします、アブラス様。」
「いやはや、そう畏まらないでください。私は未だに、こういうのに慣れないのですよ。元々は平民の出でして。」
俺も俺も、と同意したい気持ちを抑える。それにしても、平民から将軍なんてすごいサクセスストーリーである。アブラスさんは、想像以上にすごい能力を持った人間なのかもしれない。おそらくはこの町の中心を担うような人材であろう。
となると、このパーティーは町の中でも選りすぐりの中心人物を集めたものという予想を立てられる。皆の認識だと、俺は町でも有数の貴族だということになるのだろうか。その自覚は全くないのだが。
それから、アブラスさんとは少しだけ話をして別れた。軍人だからだろうか、妙に気の良い人物で、非常に好感が持てた。可能なら、今後も仲良くしたいところである。
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