第3話 貴族としての豪遊
それからの行動は早かった。
とりあえず、今日の仕事はもう無かったようなので、はやる気持ちを抑えきれず、町に繰り出した。
同行を申し出たメイドさんたちを何とか説得して、一人で町を歩く。目につく食べ物を買っては食べてを繰り返していた。
それにしても、この世界の料理は美味しい。いまいち、何の肉かは分らない肉がたくさん売っていて、そのどれもが絶品だった。元の世界の牛肉よりも美味しいくらいだ。
肉だけでなく、売っているもののほとんど全てが、元の世界で見たことがないようなものだった。海鮮っぽい何か、木の実っぽい何か、トカゲっぽい何か…。流石に、トカゲっぽい何かは食べようとは思わなかったが。
そんな悠々自適な生活を二日間にわたって続けた。
ああ、異世界転生って最高。
二日目の夜、自室に戻る前に、メイドさんに声をかけられた。
「今、お時間よろしいでしょうか、ご主人様?」
「うん、大丈夫だけど、何かあった?」
「明日行われるパーティーのことなのですが、服装の方をどうなさいますか?」
パーティーか…。そういえば、昨日の夜に招待状が届いていたな。昨日は、町で遊び疲れて、明日考えればいいかと思っていたが、すっかり忘れてた。
「服装ね。君に、任せるよ。」
正直、当然のように貴族のパーティーになんて参加した経験はないものだから、何が正しい服装なのか分らない。だったら、おそらく詳しいであろうメイドさんに任せてしまったら良いだろうという考えだ。
「了解しました。でしたら、着付けがありますので、明日の午後は屋敷に居ていただけるとありがたいです。」
「分ったよ、ありがとね。」
「そんな、滅相もございません。」
そう言うと、メイドさんは恭しく礼をして、下がっていった。
しかし、そうなると明日は町に遊びに行けないな。まだまだやりたいことはあったのだが…。まあ、一日くらいは我慢しよう。これから先、いくらでも機会はあるのだから。
となると、明日の貴族のパーティーの方に自然と興味がそそられる。どんな感じなのだろうかと想像を巡らせてみる。
貴族というと、美人が多いイメージがある。そんな貴族の女性と関わる機会なんて、元の世界を生きていたら間違いなく訪れなかったはずだ。そう思うと、胸が躍ると同時に緊張感がこみ上げてきた。
これは良くないと、首を振る。まだ始まってもないのに緊張なんてしていてもしょうがない。緊張を追いやるように、別のことを考える。
貴族のパーティーといえば豪華なご飯だろう。町で食べるのとは比べものにならないほど、美味しいものが食べられるはずだ。町の料理ですら絶品だったのに、それ以上とはどうなってしまうのだろうか、と戦慄してしまう。
食事の事を考えると、緊張感はすぐにどこかへと飛んでいった。…しかし、俺はこの異世界に来てから、食事のことばかり考えている気がする。
それでも、しょうがない気はするのだ。食事というのは人間の原初の欲求であり、人の生活とは切っても切り離せないもの。旅行に行けば、ご当地の美味しいものを食べたくなるように、異世界に来たら異世界の料理を堪能したくなるのも自然な欲求といえるだろう
そんな風に、一人で納得しながら、部屋に戻った。断じて、この豪遊の言い訳をしているわけではない。
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