みくちゃんのはたけ

 ここはみくちゃんの小さな畑です。

 お野菜が大好きなみくちゃんは、ここでダイコンとニンジンを育てています。

 野菜たちは、みくちゃんが「おいしい」といって食べてくれるのが、何よりも嬉しくて、今日もおいしい野菜になろうと張り切っています。

「わああ、大きいダイコンだわ。ニンジンもとっても立派で、きれいなオレンジ色ね。みんな、大きく育ってくれて、本当にありがとう」

 野菜たちは、みくちゃんの笑顔を見るのが大好きなので、みんなもっともっと大きくなろうと思いました。

 そんなある日のこと、畑に新しい仲間が加わりました。

 ジャガイモです。

 土の中に、ひとつの種芋が植えられたのでした。

「ぼく、ジャガイモだよ。みんなよろしく」

「こちらこそよろしく。仲良くしようね」

 みんなはジャガイモを歓迎しました。

「ジャガイモさんは、ひとりぼっちでかわいそうだなあ」

 と、ニンジンがいいました。

「ジャガイモさんは、とっても小さいのね」

 と、ダイコンがいいました。

「うん。ぼくは小さいジャガイモだけど、秋になったら、兄弟がいっぱいできるよ。だから、寂しくないんだ。それに、この畑には君たちもいるしね」

 と、ジャガイモは答えました。

「ぼくたちは仲間だね。一緒にみくちゃんを喜ばせてあげようよ」

 と、ダイコンがいいました。

「仲間が増えて楽しいな」

 と、ニンジンがいいました。

 やがて秋になると、ジャガイモの兄弟が、ひとり、ふたりと増えはじめました。

 はじめのうちは「ジャガイモさん、よかったね」といっていた野菜たちでしたが、さんにん、よにんと増えていくうちに、だんだん窮屈になってしまいました。

「ちょっと、ジャガイモさん。こんなに兄弟が増えるだなんて、聞いてないよ。ぼくはこれから大きくなる時期なんだよ。こんなんじゃ、大きくなれないよ」

 と、ダイコンが文句をいいます。

「みくちゃんは立派なニンジンが好きなんだよ。これじゃ、みくちゃんに嫌われちゃうよ」

 と、ニンジンも顔を真っ赤にして怒りました。

「ごめんよぉ。ぼくだって、こんなにたくさん兄弟が増えるなんて、思ってなかったんだ」

 ジャガイモは、申し訳なさそうに小さく丸くなりましたが、兄弟はどんどん増え続けています。

「よおし、負けるものか。ぼくたちだって、もっと大きくなってやる」

 野菜たちは、ジャガイモに負けじと、頑張ってどんどん大きくなっていきました。

 ダイコンはブクブクと太り、頭にきたニンジンは、葉っぱをグングン繁らせました。

 そんな野菜たちを、みくちゃんが収穫にきました。

「うわぁ、大きいダイコン。ニンジンは葉っぱがとっても繁っているわ。あら?ジャガイモは小さいのね」

 みくちゃんは、さっそくお料理をして、野菜たちを食べました。

「あれれ?あんまりおいしくないのね。おいしいのはジャガイモだけだわ」

 実は、みんな大きくなろうと頑張りすぎたために、疲れてしまって、おいしくなくなってしまったのでした。

「ふーっ、疲れたよぉ。ちょっと太りすぎたよぉ。苦しいよぉ」

 と、ダイコンがいいました。

「やれやれ。怒ってばかりで疲れちゃったよ。もう少し頭を冷やそう」

 と、ニンジンがいいました。

 ダイコンはスリムになり、ニンジンの顔色も、すっきりしたオレンジ色に落ち着きました。

「よく考えたら、ぼくたち、そんなに大きくならなくてもいいんだな。ちょっと力を抜いた方が、ちょうどいい大きさで、おいしくなっていいや」

 ダイコンがいいました。

「ジャガイモさん、ごめんなさい。ぼくたち、ちょうどいい大きさなら、ジャガイモさんと一緒でも全然窮屈じゃないよ」

 ニンジンがいいました。

「ありがとう、みんな。これからもっと兄弟が増えるんだ」

 ジャガイモがいいました。

「本当?それじゃあ、みんなでもっとみくちゃんを喜ばせてあげようよ」

 野菜たちはいいました。

「さあ、今日もおいしいお野菜をいっぱい食べるわよ」

 みくちゃんはとっても嬉しそうです。

 だって、近頃はダイコンもニンジンもジャガイモも、みんなおいしいのですから。

「ほんと、ジャガイモも一緒に植えてよかったわ。これからも、いろんな野菜を育ててみようっと」

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