#4-2 大久保 忍
3年C組。18歳。A型。
身長160センチ。
家族構成:父・母・妹・イヌ
友人男3人は親友の
よく6人で放課後は遊びに行っていたが、瑛莉華は先輩とのデートで不参加になることが増えた。
私は少しうれしかった。
今、大学生の男の子と付き合っているが、私が好きなのは本当は
瑛莉華がいなければ智也を振り向かせられるかもしれない。
みんなで夏祭りに行った。この日も瑛莉華は先輩と出かけて不参加だった。
私と
はぐれないようにと、真帆の手を握り智也の腕をつかんだ。それほどの人混みではなかったが彼に触れてみたくて、いつもの調子の軽いノリで智也の腕に手を添えた。彼は拒否せずに
「はぐれんなよ」
と、ニッコリ笑った。私はその笑顔を独り占めしたい欲求にかられた。
楽しそうな智也の顔が一瞬曇った。
彼の目線の先を見ると瑛莉華と先輩がいた。
浴衣を着ていつもはおろしている長い髪をアップにして、先輩と手をつないでいる笑顔の瑛莉華がいた。私から見ても浴衣の瑛莉華は色気を帯びていた。
智也は切ない表情でその瑛莉華を見つめていた。
真帆が金魚が欲しいというので、5人で金魚すくいの屋台で金魚の入ったプールを囲んだ。
瑛莉華のデートシーンを目撃して以来、智也のテンションは落ちていた。真帆と草太と陽介は下手クソに金魚すくいを楽しんでいる。
「飲み物欲しいからちょっと行ってくる。智也付き合って」
と、言って金魚の前にしゃがんでいる智也の腕を引っ張った。
「おう、ちょっと行ってくる」
智也は他の3人にそう告げて私と一緒に歩き出した。
私はつかんだ智也の腕を引っ張って人をかき分けてどんどん歩き、人目につかない境内の脇の暗がりに連れて行った。
「なに?自販じゃねぇの?」
智也は聞いた。何も答えずに私は智也に抱きついた。
「どうしたの?何かあったの?」
彼は心配そうに質問をするが、私は衝動を抑えられず、背伸びをして智也の唇に自分の唇を押しつけた。
一瞬の間があって智也は私の身体を押して顔を離して唖然とした表情で私を見ていた。
「瑛莉華の代わりでいいよ、私」
「は?」
「瑛莉華とはもうムリでしょ。先輩のモノだし。」
智也は戸惑った顔をしていたが
「わかんねぇじゃん、オレやっぱ瑛莉華のことスキだし」
ハッキリ瑛莉華へのキモチを打ち明けた智也に苛立った私は
「瑛莉華、先輩とヤリまくってるよ。入れられながら胸も攻められて、先輩ちょう上手くてちょうキモチイイって。悪いけど、もうムリだと思うよ」
と、瑛莉華はそんなこと言ってはいないが適当に言って智也を煽った。彼は顔をしかめて黙ってしまった。
どうしても私を見て欲しい。
「智也、私たちもヤろう?私智也スキだから。瑛莉華の代わりになってあげる」
何も言わない智也に1歩近づいて
「みんなには内緒にするし」
と、言って私はまた智也にキスをして彼のベルトに手をかけて
「今頃瑛莉華もシてるよ、浴衣のまま。先輩にあの胸に吸い付かれてさ、すっごいキモチいいんだって。智也もキモチよくなって」
彼の耳元でささやいてジーンズの中に手を入れた。
智也は私が導くままになった。
私達は人目につかない薄暗い木々の生い茂る場所で服を着たまま立ったまました。
「智也、初めて?」と、行為の最中に聞くと彼はうなずいていた。
彼の初めての相手になれたことに喜びを感じた。
しかし行為が終わって智也がベルトを直しながら「ごめん……」と、つぶやいた時むなしさを感じた。
私は本当に瑛莉華の代わりにしか過ぎない、私をスキでしたわけではない。
行為の最中に1度も目が合わなかったし、甘い言葉もかけられなかったし、愛おしそうにもしていなかった。私や私の身体を愛したわけじゃない、彼はただ欲望吐きだしただけだ、そう実感した。
実感した通り、智也は私に2度と触れなかった。みんなと話している時は変わらない表情をしているが、目が合っても逸らすし、2人で話すことはなくなった。
その数か月後、智也と瑛莉華は付き合い始めた。
でも、智也は瑛莉華には『はじめて』と言って、童貞のフリをしていた。夏祭りの日に欲望に負けて私としたくせに。
私が『代わりでいいから』と誘ったのだが、ウソをついて幸せそうにしている智也に腹が立った。
付き合い始めた草太も瑛莉華を未だに忘れていないふうで、よく彼女を目で追っている。そして私を瑛莉華の代わりに抱いている。
瑛莉華は選べる立場にいるのに、よりによって私が好きな智也を独占し、草太の頭の中に住み着き、彼女にも腹が立つ。
2人をどうにか別れさせたい。
瑛莉華を不幸にしたいわけじゃない、友達だから。
でも、私の関係ないところで幸せになってほしい。
私は瑛莉華をうらやんではいるけど、キライになりたくない、友達でいたい。
でも私は瑛莉華を裏切ってしまいそうで、そんな自分にも腹が立つ。
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