#2-2 松井 瑛莉華

松井 瑛莉華まつい えりか

3年C組。18歳。AB型。

身長162センチ。

家族構成:母・ネコ


 アタシは胸が大きい事が悩みだ。

何をしたわけではない、勝手に成長した。

特別に巨乳とか爆乳とかではなく、身体が細いから胸が目立ってしまうだけだとは思うが、男の子はみんな見る。アタシの顔と胸と足を見て、最後にもう1度胸を見る。なんで男の子はそんなに胸が好きなのだろう。

 それとアタシの外見がギャルっぽいのも男の子の目を引いてしまう一因だ。

化粧もネイルもして、流行りの髪色にしてフワフワに巻いて可愛くしていたい。自分でかわいいって思える女の子になりたいだけで、派手にしているつもりはない。

だからギャルで大きな胸のアタシは軽い女の子と思われてしまう。

したい恰好をして健康的に成長しただけなのに。

 たまに男の子から告白される。好きって言われるのはうれしいが、たいした話をしたことがないのに、何故アタシの事を付き合いたいほど好きなのだろうか。

簡単に付き合って、すぐエッチさせてくれるような軽い女の子に思われてるのだろう。なのでたいていの申し込みは断っている。アタシは簡単に付き合わないし、エッチもしない。


 アタシは女の友達といるのがラクで楽しかった。外見は関係なく仲良くしてくれるからだ。

学校では6人組だったが、他校の男の子と付き合ったり、趣味があったりする子は放課後は別行動で、1番仲の良いのはしのぶ真帆まほ

忍はしっかり者でさっぱりした性格、大学生の彼氏がいて経験豊富だった。

真帆は控えめでおっとりした性格、勉強もできて真面目な子だった。

2人はよくウチに泊まりに来ていて、学校のウワサ話や恋愛話をしたり、忍の年上の彼とのアレコレをキャーキャー言いながら聞いた。まさに女子会というノリだった。

 それと仲の良い男の子達もいた。智也ともや草太そうた陽介ようすけ

一緒にカラオケに行ったり、遊園地に行ったり、夏祭りに行ったり、夏休みには親には異性がいる事は内緒で1泊旅行したりした。

 ある時からもしかしたら智也はアタシの事が好きなのかもしれないと感じ始めた。

智也は学年で1番モテる。背は高いし、綺麗な二重の目で鼻筋も通っていて整った顔をしている。キリっとした顔立ちだが、目を細めて大きな口を横に広げてニッコリする笑顔はかわいかった。

でも智也が女の子とラブホテルから出てきたのを目撃したというウワサも聞いたことがあったし、いろんな女の子と仲良く接していたので、アタシの勘違いかもしれなかった。

それに智也もアタシの胸をたまにチラリと見る。

彼もまたアタシの事をすぐエッチできる子として見ているだけなのだろうか。

草太も陽介もアタシの胸をたまに見るから、智也だけじゃなく男の子はみんなそういう生き物なのか。

 彼ら3人、アタシの事を好きなのだろうか。エッチしたいだけだろうか。だから友達でいてくれてるのだろうか。

アタシはこの胸と外見のせいで男の子に対しては疑心暗鬼ぎしんあんきだ。


 アタシの懐疑心かいぎしんを強めたのは2年生の時に付き合った3年の先輩だ。先輩も人気者でかっこよかった。付き合う前はそれほど仲良くはなかったが、学校ですれ違うたびに「瑛莉華ちゃん、今日もかわいいね」と、声をかけてくれていた。

忍が大学生の彼氏と幸せにしているのがうらやましくて、アタシもそんな年上の彼氏が欲しかった。

 先輩に告白されて付き合い始めて3日目、放課後にアタシの地元の駅まで来てファストフードに寄って家まで送ってもらう途中の道端でキスされた。早すぎる気もしたが先輩はアタシをかわいいと何度も言ってくれるので受け入れた。

 ほぼ毎日先輩は家まで送ってくれる。その度にキスをした。それが2週間くらい続いた頃、先輩はアタシの唇を貪りながら胸に触れるようになった。嫌われたくなかったアタシはその手を振り払えなかった。

イヤなわけではなかったが、先輩とそういう関係になるには心の準備がまだだった。先輩はそのうちにキスもしないで胸を触るようになった。そして

「瑛莉華のおっぱい見たいな。直接触らせて」

と、人通りの少ない道端で彼は言うのでアタシは断った。

「ここじゃムリだよ」

「瑛莉華んち行こうよ。親いないっしょ?」

アタシに『好き』とも言ってくれないし、愛情が感じられるような情熱的なキスもしてくれない先輩と身体の関係を持つのは間違いだと思って

「ごめんなさい」

と、言ってアタシは先輩をおいて走って帰った。


 数日後、先輩と別れたアタシを慰める為にみんなでカラオケに行った。

アタシは実際さほど落ち込んではいなかった。間違いをおかす前に関係を終わらせることができてスッキリしていた。情けないのと恥ずかしいのとで別れた理由を言わなかったので、逆にみんなに心配をかけてしまったようだ。

あまりにもみんなが心配そうにするので『相手選びに失敗した』とだけ伝えた。

カラオケの1室で隣に座った智也が

「瑛莉華はかわいいだけじゃない、人のイイとこばっか見えちゃうんだよな。それは悪い事じゃないよ」

と、優しい手つきでアタシの頭を撫でた。アタシは目を潤ませて上目遣いで智也を見ると、彼は恥ずかしそうな顔をしてアタシを見つめ返した。優しい表情に変わった彼はアタシから目線を外さずに、見つめ続けた。

智也はアタシの事がスキだ。そう確信した。

 カラオケを終えて家に帰る電車の中でスマホがメッセージを受け取った。

<瑛莉華が悲しい時はいつでも話聞くよ。>

草太からのメッセージだった。

<もう悲しくない。みんながいるから大丈夫。>

<じゃぁ淋しい時はメシでも何でも付き合うよ。>

草太がアタシに気があるような気がした。

<ありがとう。あんまり優しくすると勘違いしちゃうよ。>

<笑>

草太はアタシの事がスキだ。これも確信した。

 でもそれは不思議だった。草太は忍を気に入っていると思っていた。2人は好きな音楽が似ていてよくそんな話で盛り上がってたし、2人共サッパリした性格で気が合っているように見えた。みんなでいる時は会話に紛れて草太はアタシと話すが2人で話すことはほとんどなく、メッセージをやりとりする程度だった。その反面、みんなでいても忍とはとても楽しそうに話していた。矛盾を感じるが、でも確信してしまった。勘違いだろうか。


 智也も草太も何もアタシには言わないが、アタシは密かに智也に決めていた。告白されたら付き合おうと考えていた。

草太も別に悪くはない。

スラっとしていてサッパリした顔で、いわゆる草食系という雰囲気だった。性格もクールで誰とでも仲良くなるタイプではないが、その感じがモテるのもわかる。シャイで口には出さないが優しいメッセージをくれたりする。きっと草太と付き合っても大切にしてくれただろう。

 でもアタシは智也を選んだ。

智也の方が顔と身長が高くて少し筋肉質な身体が好みで、セックスの相性が良さそうだったから。

根拠はないがアタシの第6感と本能がそう察知していた。

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