[第2章] 18歳

#2-1 石川 智也

石川 智也いしかわ ともや

3年B組。18歳。O型。

身長185センチ。

家族構成:父・母・兄・ネコ


 オレは昔からモテてきた。

それは何か特別な事をしていたわけではなく、自然とそうだった。スポーツは得意だが、勉強は苦手。背が高くスタイルや顔がイイと言われる。確かに、話したこともない学校がただ一緒なだけの女の子に告白されたり、駅ですれ違うだけの女性に声をかけられたりする。

オレの長所はそれくらいらしい。

それは喜ばしいのかもしれないが、中身が空っぽだと言われているようであまりイイ事のように思えなかった。それに加えて夢や希望や目標もない。ただ1日1日が楽しければそれでいい。

何もない外見だけが取り柄の男なのだ。でもそんなしょうもない取り柄ではどんなにモテようとフラれることもあった。モテるという事はなんの意味も持たない。


 そんなオレを肯定してくれるのは瑛莉華えりかという同級生だった。

陽介ようすけ草太そうた、オレの男チームと瑛莉華、真帆まほしのぶの女の子チームでよく一緒に遊んでいた。

「瑛莉華、智也の優しくて朗らかで空気を明るくしてくれるとこスキだよ」

ある時言われた。高校生だというのに彼女は自分の事を名前で呼ぶ。でも瑛莉華のかわいさなら許される。

オレは照れて「そうかよ」としか答えられなかったが

「ちょっと天然なとこも」

と、付け足して彼女はかわいく笑った。彼女の笑顔はオレの鼓動を早くする。

 瑛莉華は明るい色の長い髪をクルクルと巻いていてうっすらと化粧をしているせいで少しギャルっぽく見えるが、話してみるとわりとピュアでかわいい。他人のイイ所を探すのが上手くて、それを褒めるのも上手い。あまり積極的ではない性格でいつもかわいく笑っている。

大きな瞳にぽってりとした唇で学年でも1番のかわいさだ。

それにスタイルがいい。ほっそりしているのにおっぱいが大きい。そこに触れてみたいとオレ以外にもたくさんの同級生が思っているだろう。

オレは瑛莉華に惚れていた。おっぱいだけじゃなく、すべてに。

「智也はモテるから、瑛莉華達には内緒でいっぱい遊んでるんでしょ」

と、彼女はオレを決めつけていた。モテる事が裏目に出ている。だから告白はできずに、まずはオレが真面目な男だというところを見せて信用を得てからだ。


 ある日の夕方、オレは居残りで課題をやっていて帰る為にだいぶ静かになった校舎を歩いていた。声が聞こえてその教室をのぞいてみると、夕暮れの薄暗い教室に瑛莉華と男子生徒がいた。オレは身を隠して会話に耳をそばだてた。

どうやら瑛莉華はその男に告白されている。

どうかその男をフってくれとオレは願いながらその光景を見守った。オレの天使である瑛莉華がアイツに触られると考えただけで発狂しそうだ。

 男はどうやらフラれたようで教室を飛び出して走り去った。

オレがほっとしていると、瑛莉華も教室から出てきてオレを見つけた。

「見られちゃった?」

恥ずかしそうに上目遣いで聞かれた。

「あぁ、偶然。わりぃ。フったんだ?」

「うん……」

彼女はしんみりと申し訳なさそうに下を向いて答えた。

「なんでフったの?」

「瑛莉華、好きな人いるから」

オレは聞いてはいけない事を思わず聞いてしまって瑛莉華はまだ下を向いたままだった。自分の浅はかな質問に彼女を戸惑わせたあげく、彼女には好きな人がいる事を知って自分までショックを受けるはめになってしまった。

お互い何も言えず少しの沈黙があって、瑛莉華が口を開いた。

「智也だよ」

彼女は頬を赤らめて眉毛を困らせて大きな瞳を潤ませながらオレを見つめた。

「好きな人?」

あまりの衝撃の告白にオレが自分で自分を指さして聞き返すと瑛莉華は無言でうなずいた。

「オレも、瑛莉華の事ちょースキ。前から、ずっと、めっちゃスキだった!オレの彼女になって下さい!」

嬉しくてテンションの上がったオレは夕暮れの校舎の廊下で大声を出した。

彼女は涙をポロポロこぼしながら「もちろんだよ」と、笑顔で言った。オレの目も潤んだ。

ここが学校でなかったらこのまま彼女を抱きしめて、唇を奪いたいほどだったが、歯を食いしばって我慢した。

「一緒に帰ろ?」

瑛莉華はそんなオレの頑張りなど知らず、オレの右手をにぎった。彼女の左手を握り返して手をつないで一緒に学校から出た。帰り道、オレは衝動しょうどうを抑えるのがやっとだった。

憧れの瑛莉華はオレの恋人になった。


 交際してから1ヶ月ほどで瑛莉華は唇を許してくれるようになった。オレ達は人目につかないようにたくさんキスをした。でも男子高校生のオレはそれだけではもう満足できない。交際する前からさんざん想像してきたが、早く彼女の制服を剥ぎ取りたい。彼氏になった今、オレだけがその権利を手にしているのだ。実践に移せる日を待っていた。

 そしてついにその日がやってくる。

瑛莉華は兄弟はおらず父親を幼いころに亡くしていて母と2人暮らしで、その母は働きに出ていて帰りが遅い。その誰もいない家についに招き入れてくれたのだ。

かわいい彼女の部屋の整ったベッドを見るだけでオレの忍耐は決壊寸前だった。

2人でベッドに腰かけてキスをした。そして瑛莉華の張り出した胸に触れた。

すると彼女は胸の上のオレの手を握って、唇を離して

「智也、瑛莉華の身体からだが目的?」

と、聞いた。身体も目的の一つなのは確かだが、オレは瑛莉華をずっと前から愛している。愛している人と一つになりたいという欲求は普通ではないだろうか。

「なんならシねぇし、今日。我慢できるし。瑛莉華の為なら」

オレは言った瞬間から自分の言葉に後悔した。

「ごめんね、瑛莉華、怖くて……」

彼女はうつむきながら言ったのでオレは彼女の両手を握った。

「オレが怖い?」

「なんていうか……智也、他の女の子とホテル行ってたってウワサあったし」

確かに過去にそんなウワサが流れていた。誰かがオレが女とホテルから出てくるのを見たというデマを流した。当時も否定したがそのウワサには迷惑していた。

「それデマだし」

「ホント?」

「だって、オレ、初めてだし」

オレの言葉を信じた瑛莉華は「そっか」と言って、顔を上げてまたオレを見つめた。今度こそと思ったオレはまた瑛莉華の胸に手を伸ばすと

「待って、前付き合ってた人、瑛莉華より瑛莉華のおっぱいが好きだったみたいで、おっぱいばかり触って……」

彼女は胸の前でオレの手を握って制し、わずかな期間だが1つ上の先輩と付き合っていた時の話を始めた。

「まだ付き合ってちょっとしか経ってないのに直接触らせてって言われて、身体目当てなんだって思って……。それで別れたの」

先輩とは告白されて付き合い始めてあっという間に別れたことを当時不思議に思っていた。そんな理由があったとは知らなかった。瑛莉華の初体験はあの先輩なんだと勝手に思い込んでいたが、それはどうやら違うようだ。瑛莉華の一生の思い出に残るという栄誉までこの手の中にあるのかと思うと、先ほどの言葉を訂正したかった。

 しかしオレも一線を超えたら先輩のように歯止めが利かなくなるのは確信していて、瑛莉華の言葉は自分に言われてるようで胸が痛い。

「でもオレ……、オレも多分毎日瑛莉華のおっぱい触りたくなっちゃうと思う。でも、でも、それはオレは瑛莉華の事愛してるからだし」

「智也ならいいかな」

「まじで?」

「うん。智也の事好きだから。ほんとは瑛莉華も触ってほしい」

その言葉でオレの理性は飛んでいき彼女をベッドに押し倒した。

瑛莉華のおっぱいは、滑らかで、柔らかくて、弾力があって、初めてのその感触にオレの手は吸いつけられて手放せなかった。オレの血液のすべては一部に集中して脳には血液が循環してないようだ、一心不乱に本能のままに瑛莉華を貪った。

 オレ達が一つになると瑛莉華は大きな瞳に涙を貯めて顔を赤く蒸気させてとろけそうな表情で覆いかぶさるオレを見つめている。オレは彼女を抱きしめた。

「瑛莉華、結婚しよ。毎晩エッチしような」

オレが息も絶え絶えに耳元で言うと

「うん、瑛莉華……智也と結婚するぅ」

と、かわいくせつない声で答えたのを聞いてオレは彼女への愛情をはきだした。

オレ達は誰もがうらやむカップルとなった。

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