第33話 白須賀
潮見坂は、街道一の景勝地と言われる、風光明媚な場所だ。
峠の上から遠州灘を一望する光景を、歌川広重も描いている。
西国から旅をしてきた旅人が、初めて太平洋を目にする場所と言われている。
ちなみに富士山についても同じことが言われていたのであるが、この話、見付のときにもあった。
「ねえ、タマコちゃん。なんでそんなことが言われているのかしらね?」
「そんなこと、知らすか!」
『〜すか』とは、二人がこれから行こうとしている先で使われる、三河弁や名古屋弁で、『〜ない』という意味。
この場合は、「そんなこと、知らないわよ!」というほどの意味である。
思わずそんな冗談も出るほど、口が軽くなるような、美しい風景を堪能できる場所だ。
さらに進んで白須賀の本陣に入ると、
曲尺手とは、宿の出入り口などに造られた、S字型に曲がった道のこと。
敵の侵入を防ぐため、また、大名行列同士がかち合わないための工夫だ。
見張りを先に行かせ、向こうから格上の大名がやって来たときには、格下の大名はいそいそと途中の寺などに退避するというのだから、大名の世界も辛いものがある。
だが、近未来ではそんなことは関係ない。
二人にとっては、格好のスキー路である。
ザッ、ザッと、華麗にS字をクリアしていく。
「これが、
「静岡じゃ、今や残っているのは、ここだけなのよね」
白須賀は、ひっそりとした昔ながらの街並みを残している。
道の両脇には、火防樹のマキが植わっている。
この辺りは冬の風が強いため、延焼防止のために槙の木を植えたものだ。
かつてはどこの宿場にも見られたようだが、今じゃ残っているのは珍しい。
地域の歴史に思いを馳せたところで、次の
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