第34話 二川
白須賀の宿を出てまもなく、二人にとっての、ちょっとしたイベントがあった。
「3、2、1、ジャーン!越えましたーっ!」
「とうとう、愛知までやって来たのね!」
ここは静岡と愛知の県境。
33番目の宿、二川からは、愛知だ。
神奈川と静岡の境を越えるときは、気づかないうちにあっさり越えてしまったが、長い静岡を旅して来た後である。
ついに愛知に入ったかと、感慨もひとしおだ。
「私たち、本当にこんなところまで来ちゃったのね」
「それも新幹線も使わずに、スキーでよ!」
「これより愛知」の看板の前で、パシャリ。
記念撮影をしてから、二川宿の中心へと入っていく。
ここは、
枡形とは、曲尺手と同じく、防御のための、くねった道。
こちらは直角に折れ曲がった形だ。
当然、右へ左へ、ミケタマのスキーテクニックで通り過ぎていく。
宿を通り過ぎた後は、さらなるテクニックの見せ場があった。
「ここが名高い
「登り坂のモーグルなのよね」
「結構急だわ」
「気合い入れてかからなきゃ!」
モーグルのコブでいっぱいの急坂を、エンジン全開で登っていく。
でも、それだけではない。
ここのモーグルには、恐ろしい仕掛けがあった。
「きゃっ!」と、驚き身をかわすミケコ。
ゴオオ……!
コブのてっぺんから、火柱が上がっていた。
「これが火打坂なの……!」
急なことにバランスを崩したが、それも一瞬のこと。
すぐに平衡を取り戻して、ミケコは次のコブに向かう。
「気を付けてよ!」と、タマコは相棒に一言。
ゴオオと立ち上る火柱を、ヒラリとかわした。
しかし、よくよく考えてみれば、ここはゲレンデ。
いくら人工雪とは言っても、本物の炎が出れば、雪を溶かしてしまう。
「あ、なあんだ、この炎、フェイクだわ」
「びっくりした。良く出来たイリュージョンね」
あくまで、これは旅人を楽しませるための、アトラクションなのだ。
そうとわかれば、楽しんで火打坂を登り切った二人なのであった。
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