第6章 文化祭の日になりました -8-
「収集つかねえぞ、これ」
人間と神の壮大な追いかけっこを目の当たりにし、宇良が顔を引きつらせている。
「あいつがやられたら、今度は俺たちの番なんじゃ……」
「おらあ!」
「ぎゃー!」
隼人がつぶやいたのと、洩矢が張り手の餌食になったのは同時だった。最後に残った優月たちに顔が向けられ、隼人の予想は残念ながら的中しそうだった。
「がはは。お前らも遊ぶかあ?」
ずしずしと向かってくる軍神に、三人とも気圧される。いくら宇良の腕が立つと言っても、戦いの神に敵うとは思えない。こんなものを出してしまった優月は責任を感じ、しかしどうしようもない現実に打ちのめされていた。だが、救いの神はまだいた。
「カア! 小僧!」
カっちゃんの呼びかけに反応して振り向けば、依代箱が再び光っている。優月はうさぎのごとく跳びついて、ガチャを回した。
本日二回目のガチャから生まれたのは、これまた大柄な大男。
「カア。今度は
「お、お、お前は……」
「貴様……。俺様との約束はどうした」
「カア……!
カっちゃん曰く。
以前の日本の国は、
途中のやりとりは省略するが、
結論からいえば、
恐れをなした
「諏訪湖あたりにいないといけない神様が、諏訪湖から遠く離れたここに来ちゃったということは……」
「カア。約束を破ったということになるナア」
「約束を反故にしたとなれば、命を奪わないという約束もなかったこととしてよいな。覚悟しろ!」
言うやいなや、剣を振りかざして
「わ、悪かった! 堪忍してくれ!」
「黙れ! 今度は全身を握りつぶしてくれるわ! その前に脚を切り落としてくれよう!」
また追いかけっこが始まった。ただし、今度は
地響きを二倍にして、せっかく譲ってもらった国の土地をめちゃくちゃに踏み荒らしながら、大男の追いかけっこは続く。そうかと思えば、空に向かって見えない階段を上るように、高い所へ走っていってしまった。
そんな二柱の姿が見えなくなるまで、優月たちはぽかんと空を眺めていた。
「今のって、後夜祭の締めのショーだったりするのか? すげえな、追いかけっこって三次元でできるもんなんだな」
隼人の天然ボケに、宇良と優月は渇いた笑いを漏らす。
追いかけっこしてもいいけど、せめて人間の迷惑にならないところでやってほしいと思った優月だった。
そんな三人の様子を、遠巻きに見ているひとつの姿があった。視線の先は、優月が背負ったボストンバッグ。
「便利なものを持ってるじゃないか。それを君だけのものにするのは惜しい」
そうつぶやいて、男は去っていった。優月の慌ただしくも充実した高校生活に、暗い影が差そうとしていた。
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