第28話 お荷物荷物持ちには荷が重い 2/3 (sideダン)

「今回はマツィラ廃坑攻略で、子爵様から赤金貨100枚の報酬が出てますのでいつもより多いっす」

「「「「「いいねぇ〜!」」」」」

流石に10分前と同じ失敗はしない。

ちゃんと説明をする。

「えー先ずっすが

「あ、ああ、ダン。こっちで見るから大丈夫だよ!大丈夫!! 任せてよ!」

「!!」

ハーマス様が爽やかな笑顔でご指摘下さる。

そりゃそうだ!

さっきの書類はイレギュラーだけど、これはいつものだ。

それに分量もかなりある。

いちいち読んでたら時間が足りない。


さっきと今じゃ話が違うってのに……全くオイラは何も分かっちゃいない。

死にたい。

いや、死んだ方がいいに違いない。


「なあ、ダン?」

「はいっす!」

バーグ様が紙をめくりながら話し掛けて下さる。

しまった。今は目の前に集中しないと。

ほんとにゴミだな、オイラは。


「このポーションの瓶の買取って、合ってるか?」

「―――!!」

まずい。

まずい。

まずい。

まずい。

そこをきちんと書くのを忘れていた。


実はドゥルベアズとの戦いの時、2本空き瓶が回収出来なかった。


「す、す、すすすすみませんっす! 申し訳ないっす!」

「「「「「やっぱりか!!」」」」」

「じじじ実はドゥルベアズとの戦いの時、皆様方が使われたポーションは186本なんすが、184本しか瓶を回収出来なかったっす! なので、瓶の買取価格が少し低いっす!」

「「「「「………」」」」」

ああ! あんなにお優しい皆様方がどうしようも無いものを見るような目をされている。


もうダメだ。

オイラに生きる資格はない……。

……元々無かったけど。


「あー、まあ、その、なんだ……そんなこともあるよな!」

「そうね!」

「仕方ない、ございます」

「すぐ取り返せばいいんだよ!次回頑張るということで!頼むよ!」

「よし、解決したな」

「「「「異議なし!!」」」」


…………神だ。

ここには神がおられる。


「はいっす!ありがとうございますっす! 誠心誠意、全生命力をかけて頑張らせて頂くっす!!」

「「「「「……」」」」」

「……あんまり、無理しないでね」



◆◆◆◆◆◆



「そうそう。モンスターの買取価格って見れるかな?」

モチュリィア様が尋ねて下さる。

「買取価格っすか? あるっすよ」

分厚い紙の束を渡す。

皆様方は倒すモンスターの数もかなり多いので、一覧も分厚くなる。


「ダニエルの時のホワイトブラッキーは…」

「これっすね」

「……ありがとう」

「とんでもないっす」

「キノコの時のガルプは……」

「それはこれっすね」

「「「「「……」」」」」

「どうしたっすか? オイラなんかやらかしたっすか!?申し訳ないっす。すみませんっす」

「いや、大丈夫。大丈夫だ。問題ない。全くもって。これっぽっちも」

「そうっすか?」

「それより、買取価格だ!」

「そうね!」

「……ホワイトブラッキーとガルプで紺核の値段が余り変わらない、ございます?」

「本当だね。ホワイトブラッキーの方が格は上なのに」

「それはっすね、状態の問題っす。ホワイトブラッキーはランクがB+、ガルプがBっすね。なので、状態が一緒ならホワイトブラッキーの方が高いっす」

「だよね?」

「ただホワイトブラッキーは状態のランクがB、ガルプはAっす。Aランクはボーナスが多いっすからB+とBぐらいの差は殆ど無くなるっす!」

「冷凍保存法ってメジャーなんでしょ?それでもBなの?」

「とんでもないっす。普通は良くてC、大体はDっす。冷凍の場合、解体屋さんへの手数料が発生するんでその分、ランクが1つ落ちるっす。冷凍法でBが取れるルラ様の魔法は凄まじいの一言っす!」

「ふふん! もっと褒めていいぞ、ございます」

「すごいすごい。で、抜き出した紺核は専用のケースがないと持ち歩けないんだろ?」

「おい、ヴィド、ございます」

「オイラは皆様方にお借し頂いてるマジックバックがあるっすから。マジックバックが大きいので、中の空間を紺核1つずつで分ければ、傷は付かないっす。すごい鞄っす!」

「「「「へえ〜」」」」

「鞄の力っす!……ひぇっ!?」

「……」

ルラ様がすごい睨んでおられる。

調子に乗ったからだ!

超がいくつ付いても足りないぐらい超大天才のルラ様からしてみれば常識の話を、知ったかぶって偉そうに話したから!


「ど」

「ん?ルラ、ど……

「どういうことだ、てめぇオラァ!?」

「ヒィっ!?」

ルラ様が机を乗り越えて、オイラの襟首を掴む。

「ルラ!?」

「ウェスカンジを100も200も分散させるって、波紋の集約はどうなんだァッあぁ!?」

「ふぇ、ふぉ、りゅ」

ぐわんぐわん揺らされる。

「落ち着け!」

「ベルベレット定点が9から16へ移行するにはユタカ力場にビア曲面から干渉する必要があんだぞっ!?おい!分かってんのかてめぇ、ゴラァ!?離せ、カバミャントン!!」

バーグ様がルラ様を後ろから抱えて引き剥がして下さった。


「無理だから!そんな会話成立しないから!何言ってるかも分からないから!」

「テメェのレベルを知り腐りやがれぇ!!」

ハーマス様がルラ様をなだめようとして下さる。

言葉が通じないバカにまともに話しかけても時間の無駄だと説明して下さっている。

ありがたいが、バカで申し訳ない。


「てめぇ、説明しやが「フィティルア!」

ユリエ様が奇跡の術を唱えると、黄色い光がルラ様の頭にふわりと落ちる。

「「「「………」」」」

カクン、とルラ様の頭が下がる。

「……あれ?」

落ちた頭が元に戻る。

「ちょっとテンションが突き抜けた、ございます」

「大丈夫か?」

「大丈夫、ございます」

「久しぶりに出たな」

「面目ない、ございます」

「魔法のことになると我を失う癖、治しなさいよ」

「お菓子で我を失う乳牛メシャブには言われたくない、ございます」

「貴方、反省してないわよね?」

「ダン、ごめんなさい、ございます」

「と、とととととんでもないっす」

ルラ様に頭を下げさせるなんて、オイラはなんてことを。


「はい!この話はこれで終わり! 仲直りの握手! はい、よく出来たね! じゃあ次の話だ」


「は、はいっす」

る、る、ルラ様の手を握ってしまった。

ルラ様の手が腐らないといいけど……。


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