第24話 凄腕荷物持ちはつけ込みたい 3/4 (sideダニエル)
…………こいつら、やべぇ……。
モンスターを殺すスピードがやべぇ。
一撃か二撃で片付く。
現れた瞬間には死んでる。
下級クラスならともかく、中級上位の遺跡の討伐速度じゃない。
斥候のくせに、見つけるなり神憑り的な射撃でモンスターを射殺すモッチさん。
矢の通りが悪い相手を盾で弾き飛ばし隙だらけにするバーグさん。
そして、その隙を逃がさないルラちゃんの魔法が怖すぎる。
火魔法ならまだしも、水魔法や風魔法でモンスターが跡形もなく消えていく。
ハミ君の剣術もヤバい。
気が付いたらモンスターが真っ二つになってる。
近付いたのも、刀を抜いたのも見えない。
風が吹き抜けるような速さでどんどん進んで行く。
そんな怪物共に必死に付いていくユリエ。
健気で可愛い。
昨夜のヘンリエッタちゃんもジュリエットちゃんもメルシーちゃんも3人とも可愛かったけど、ユリエは格が違う。
顔もだけど、体がヤバい。
おっぱいとおしりがパッツンパッツンだ。
それに近付くといい匂いがする。
こいつらは自分のことに必死でユリエのことを全然見てない。
回復役のユリエを守らないスタンスの意味が分からない。
非常識なヤツらだ。
だから俺っちが側にいてやるようにしている。
でも、奥ゆかしいというか、恥ずかしがり屋というか、俺っちが近付くとすっと離れようとするのが可愛い。
美人なのに可愛い。
最強だ。
俺っちには分かってる。
いつもはもっと緩い服を着てるのに、今日は体にピタッとした服を着ている。
俺っちのいる今日は、だ。
俺っちはそんな鈍くねえからな。
ちょっと積極的に詰めてやらないと、こういうタイプは自信を無くしちまうんだ。
健気でお淑やかで美人でスタイル抜群の彼女とか最高じゃねえか!!
今回、マジで美味しすぎる!
「フリーズ」
おい!?またか!?
ルラちゃんの悪魔の呪文が聞こえる。
今度はなん……え??
「ダニエル君、頼むよ」
先頭では、頭を失った膝丈ぐらいの鉄製の人形――レッサーアイアンゴーレムが立ち往生しており、刀を納めたハミ君がキラキラした笑顔を向けている。
鉄の塊みたいな人形がなんで切れるんだよ!?
切断面もおかしいんだよ!
磨いたみたいに、ツルツルってなんなんだよ!?
普通、アイアンゴーレムなんて完品で残るモンスターじゃねえんだよ!
ボコボコに潰さねえと死なねぇんだから!
くそ!
コイツ、サイズの割に重いんだよな。
上に載せれねぇから、荷物の積み直しだ。
魔法で消滅させるルラちゃん以外、こいつら倒し方が綺麗すぎる。
だから倒したモンスターが大体使える。
既に半日の量じゃねえ!
3日、4日キャンプ張ったぐらいの量だぞ!?
くそ!荷物が重い。
後、全然休まねぇ!
宿営地を通り過ぎた時は正気を疑った。
普通なら休憩する場面もバカ高い上級の体力ポーション飲んで終わりだ。
クレイジーだよ!マジモンの!
しかも、ダニエルは飲まないのか?とか言いやがった。
1泊の遺跡潜りで割高な体力ポーションなんか持ってくるわけねぇだろ!
休めば済むんだよ!休めば!
「大丈夫かい?」
ハミ君がキラキラの笑顔のまま聞いてくる。
しかし、大丈夫なわけねえだろ!とは言えない。
「大丈夫っすよ!」
余裕を見せて返す。
実際、まだ大丈夫だ。
「もうすぐ宿営地があるから、今日はそこまでにしよう」
もうすぐ?
もうすぐって言ったか?
さっき宿営地をスルーした所だぞ?
次の宿営地まで、同じぐらいの距離があるんだぞ!?
「任せるっす!」
しかし、なんとか怒りを押さえて答える。
コイツらだって強がってるんだ。
俺っちよりも上だってマウント取ろうとしてるんだから。
「おい! あっちはありそうだぞ」
何がだよ!?
フラフラどっか行ってたバーグさんが帰って来た。テンションも高い。
またキャラメル石か!?
もういいだろ!?
見た事ないぐらい集まってるぞ!?
「よし、じゃあ行こうか」
いや、軽い!
軽いよ、ハミ君!
よし、じゃねえよ!
宿営地が遠いんだよ!
真っ直ぐ行けよ!
「………。分かったっす!」
くそ、テストにしても質が悪ぃ……。
「ダニエルさん、大丈夫なの?」
ユリエの声が沁みる。
優しい、可愛い、そして、エロい。
「全っ然大丈夫っすよ!ユリエ!俺っちにどーんと任せるっすよ!」
ユリエの俺っちへの純粋な期待は裏切れない。
見せてやらぁ!!
「おい! こっちだ!」
「え? どこどこ?」
「この辺りだ!」
「………」
「クラック使うか、ございます?」
「クラックなら、こっちからこの角度だ!深度は1m強!」
「任せやがれ、ございます!」
「よし掘るぞ!」
「力は要らんからな!」
「慎重に、だね」
「おう!」
「ルラ、こっちから風を送ってくれ」
「よし来た、ございます!」
「おい! 見えたぞ!」
「…………」
「なんだあれ?」
「あの、ごぼっとした塊? なんか汚くない?」
「いや原石だ。磨けば光るぞ」
「光る!? じゃあ宝石!? ねえ! あれ宝石!?」
「おう! アセーラだ! でかいぞ!」
「「「「おおっ!!」」」」
「掘り出しモンだ!!」
「言葉通りにね」
「……………」
大笑いする5人。
なんでコイツら全員マイツルハシと、マイピッケルを持ってるんだ?
先端が風精霊の加護を受けてほんのり光ってるし、グリップもサイズも完全にオーダーメイドだ。
1人か2人でいいだろ?
全然、周囲の警戒とかしてないし。
モッチさん、岩削ってないで働けよ!
てか、デケェよ!
アセーラの原石がデケェわ!
普通、親指1本ぐらいの大きさのはずの原石が、どう見ても拳ぐらいある。
しかも、次々探し当ててる。
やべぇよ!
柔らかいキャラメル石と違って、アセーラは割れやすいんだよ。
既にキャパギリギリの所にこんな壊れやすい高級品持ちたくねぇよ!
てか、落ち着け!
はしゃぎ過ぎだ!
ユリエ!顔に土が付いてる!
可愛い!
あ、目が合った!
照れてる。
もっと可愛い!
◆◆◆◆◆◆
荷物を広げ整理する。
敢えてこうみんなの前で仕事して出来るアピールをする必要がある。
改めて見るが、やっぱり多すぎる。
ハミ君達は討伐も採取も半端なかった。
足でまといがいなくなってテンションが突き抜けたからに違いない。
半日の荷物量じゃないのが悪いんだが、俺っちに対してなんか大丈夫か?みたいな雰囲気があった。
満を持して用意した夕食も予想外だった。
まさかマルテティのクローダを用意して殺されそうになるとは思わなかった。
まぁ、あんな美味い食事を用意してたなら確かにクローダじゃ物足りないだろう。
ってかコンロとか持ち歩く余裕があるなら、少しぐらい俺っちの荷物持てよと言いたい。
食ったことないぐらい美味かったけど。
これだけ丁寧に扱ってパーティに欲しがる俺っちの評価がこの程度で落ちることはないだろうが、引き抜きの条件が下がったりしたら面白くない。
ここはやっぱりあのゴミとは違うなって所をきちんと見せておかないとな。
しかし、さすがは〖
宿営地であんな美味い飯食ってるのに、全員、鋭い目付きで周囲を警戒していた。
ああいう隙のなさが一流ってことなんだろう。
さて、俺っちも一流の技術ってやつを見せてやりますか。
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