第23話 凄腕荷物持ちはつけ込みたい 2/4 (sideダニエル)
……なんでコイツらもう集まってんだ?
まだ集合時間から15分しか経ってないぞ?
駆け出しのザコパーティならともかく、Aランク遺跡攻略者が時間通り動くとか……意外とショボイヤツらなんだろうか?
しかも「おはよう」と来た。
先に挨拶するってことは自分達が格下だって認めるってことだ。
冒険者は面子が大事なのに……。
大丈夫か? コイツら?
あ! そうか!
分かった!
分かったぞ!
コイツらは俺っちにメンバーになって欲しいんだ!
寄生虫はさっさと潰して俺っちみたいな前途有望な
そう考えれば辻褄が合う!
シギルを渡したのも、待ち合わせに先に来たのも、挨拶を先にするのも。
なるほどな!
なるほどなるほど!
モッチさんが俺を見ている。
新しい装備が気になるんだろうな。
すげえの持っててビビったか?
あんたらの金……いや、もう俺っちの金か!
その金で買ったんだけどな!
「問題はないかな? ないなら行こうか」
「大丈夫っす!」
楽しい時間になりそうだ。
◆◆◆◆◆◆
俺っちのことを仲間にしたくてしょうがないコイツらに、想像以上に役に立つところはきちんと見せていかないとな。
あの生活が出来るようになるってことだから、少しは世話してやらねぇと。
先ずはライトの魔法だ。
灯りは魔力を使うことが少ない
魔力が少ないヤツは松明なんかを使うが、ここは鉱山。なるべく火は使わない方がいい。
それに俺っちのライトは特別だ。
普通のライトよりかなり明るい。
普通のライトは松明より暗い程度。
でも、俺っちのライトは松明並に明るい!
感動すること間違いなし!
「灯りを点けるっす! ライ「ルラ、頼むよ」
「えぇー、ございます」
は?
リーダーのハミ君がルラちゃんに頼んだ。
いや、魔法使いにライト程度でムダに魔力使わせちゃダメだろ?
「いや、魔力はのこ「でも、まあ仕方ない、ございます。『ライト』」
は?
なんだこれ!?
これ、ライトじゃねえだろ!
普通のライトは手にぼんやりと明かりが灯る。
高等技術で額に明かりを灯せるヤツもいるらしいが、これはそんなもんじゃねえ。
単純に1個の明るさがレベチだ。
太陽とは言わないが満月ぐらい明るい。
しかも、それが16個。
体から離れてフワフワと漂い、あろうことか動きに合わせて付いてくる。
鉱山の中とは思えないほど明るい。
これ、もうライトじゃねえよ!
なんでこんな生活魔法を極めてんだよ!?
「なんだ
「いや、大したもんだと思ってるよ?」
「あ、当たり前だ、ございます!? アイツと一緒にすんな、ございます!?」
ルラちゃんが怒って足を踏み鳴らす。
アイツってのは
そりゃそうだ。
ライトすらまともに使えなさそうなあの無能とこんな異次元の魔法を比べられたらぶちギレて当然だ。
「うん。ありがとう、ルラ。魔力は大丈夫かな?」
ハーマスが頷く。
「この程度、問題あるか、ございます!」
フン!と腕を組むルラ。
マジか!?
いや、流石に強がりだろ。
こんな魔法、使い続けられるワケがない。
しかし誰も気にした風もなくさっさと進み始める。
大丈夫か?
うおっ!?
歩き始めてすぐ、壁を突き破って何かが飛び出して来た。
あれはコウザンア
うえっ!?
バーグさんが盾でぶん殴るとコウザンアラシの頭が潰れた。
めちゃくちゃ速ぇえ!!
コウザンアラシが丸まって硬くて鋭い棘を逆立てると魔法以外では攻撃出来なくなる難敵だ。
それを丸まる暇すら与えず瞬殺。
しかも頭だけを的確に叩き潰して。
力馬鹿のウスノロと言われる巨人族とは思えない。
「潰れちまったな……」
バーグさんが驚いたように盾とコウザンアラシを見比べている。
あっ!そうか!
そういう事か!
それを見て分かった。
俺っちの力だ!
俺っちの『
その効果でバーグさんはいつもより破壊力が上がってるんだ。それで驚いてるんだ。
なるほどな。
コイツらだって自分達の実力は把握してるだろうから、いつもより破壊力が上がってれば、俺っちの応援の効果だって分かるはずだ。
いやー参ったね!
これでまた1つ俺っちの評価が爆上がりだ。
「??」
そう思ってたらモッチさんがコウザンアラシの解体を始めた。
薄く青く光る刃を持った見るからに切れそうなナイフで、コウザンアラシの体を開いていく。
「ダニエル」
あまりに鮮やかな手つきに見蕩れていると専門の解体屋も驚く速さで抜き出した紺核を差し出された。
「……はいっす?」
なんで解体したんだ??
「どうした?」
「「「「??」」」」
なぜか全員、不思議な顔してる。
「いや、モッチさん、剥き出しの紺核は運べないっすよ?」
「「「「「………」」」」」
まさかと思って聞いてみると、全員黙った。
マジか、コイツら!?
常識だろ!?
「紺核は傷つき易いんで、専用のケースがいるっすよ。傷がついたら価格が下がるっすよ」
今更過ぎる話を改めてする。
「でも、死体に埋め込んだままだと魔素が抜け出して価値が下がるでしょ?」
ユリエが食い付いてくる。
必死なのが可愛い。
「傷がつくよりマシっすよ。傷口から抜ける方が多いっすから。それに、冷凍保存法が出来てからはそれほどでもないっす。だから抜き出さないっす。しかも今回は一泊の予定ですし」
駆け出しでも知ってるような話をすれば全員が初めて聞いたような顔をしている。
しかも冷凍保存法まで知らないなんて言われる。
……これは間違いなくあの
ったく仕方ねぇな。この俺っち様が荷物持ちの真髄ってやつを見せてやるか。
ルラちゃんがコウザンアラシにフリーズを唱える。
……これ、凍ったのか?
何も変わってないぞ?ルラちゃん不発?
って冷たっ!?
なんだこれ!? なんだこれ!?
触った所が凍傷になりそうなぐらい冷たい!?
見た目変わんねぇのに!?
意味分からん……。
ま、まあいいや。
モンスターを括り付ける専用のロープ――表面が柔らかくよく伸びるが、締まりが良く緩みにくくい――を使って背負っていく。
みんなの視線が集まる。
手際の良さに驚いてるようだな。
コウザンアラシを背負う俺っちをモッチさんが見ている。
解体してもらった部品を傷むとか何も考えずにただリュックに詰め込んでただけのバカと比べて、頼りになり過ぎるのは仕方がない。
任せろ、と笑って返す。
モッチさんはピクっと眉を動かした後、少し挑むような目をして前を向いた。
『俺たちの移動速度に付いて来れんのか?』
その背中は確かにそう語っている。
俺っちの実力に驚かされっぱなしなのが、トップパーティのプライドに触れたのだろう。
いつもより速度を上げて驚かせてやろうって魂胆だろうな。
しかし、あんなゴミと一緒にしてもらっちゃ困る。
俺っちの実力、がっつり焼き付けさせてやる!
不敵な笑みを浮かべると、俺っちは足取り軽く進み始めた。
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