第141話 力

 とりあえず戦闘で使った光の玉の明かりを弱める。その後、世界地図ワールドマップを確認……


「…一階層だけでもかなり広そうだね」


 あまりマップは完成していない。とりあえず、気配察知で何となく敵がいる場所にマーカーを付けておく。


「…全部別行動してる?」


 さっき見た時は結構まとまってたんだけど……あぁ、そうか。私が倒したことで警戒しているのか。それで私を見つけたら一斉に群がるつもりかな。


「…とりあえず行ってみよう」


 気配察知を頼りに、少しづつ道を進んでいく。ちなみにダンジョンではあるけれど、今まで宝箱のようなものは見つけていない。

 ……おそらく、学園のダンジョンと同じような状態になっているのだろう。


「急がないと…」


 手遅れになる。


「…あれ?」


 今、なんで手遅れになるって……


「……まいっか」


 とりあえず先を急ぐ。

 マップを完成させつつ、敵を探す。でも見つかると群がるつもりかもしれないから、倒し方を考えないといけないね。


「おっと……いた」


 危うく目の前に躍り出るところだった。

 角から覗くと、またしても同じ敵。


「鑑定できるかな…?」


 やってみようか……あ、できた。


 パラサイ・カラモス:弱点は眼。


「……え?これだけ?」


 弱点が分かるのはありがたいけどさぁ…もうちょっと情報ほしいなぁ…

 まぁ文句を言っても仕方ないので、攻略法を考えることにする。

 まず弱点を狙うことかな。聖火を纏わせて眼を一突きできれば、ほぼ一撃だろうし。

 ……ただ、問題がある。それは、瞼。さっき戦った時に瞼がアイスアローが弾かれたからね。突き刺すのはそう簡単ではないだろう。基本的にとじてるみたいだし。


「…あるとすれば、武闘スキル…か」


 零式一戦ぜろしきいっせんは、一気に近付いて突き刺すには持ってこいだろうけど、威力が足りない可能性がある。


『ちょうどいいのあるよ?』

「あ、ほんと?」

『うん。えっとねぇ……』





「…よし。なんとかなるかも」


 翡翠から教えてもらった武闘スキル。練習はここでは出来ないけれど、感覚としては上手くいくと思う。


「ふぅ…よし」


 パラサイ・カラモス……もうカラモスでいいか。

 カラモスの居場所を確認。よし。


「…魔刀術・一刀・我流・電光石火・斬!」


 簡単に言ったら、身体強化を使ったゴリ押し。

 目にも止まらぬ速さでカラモスの脇を通り抜け、その瞬間に触手を三本かっさらう。


 キシャァァァァ!?


 よし!予想通り混乱させることに成功した。瞼も開いている。


「一刀・突き!」


 見事に見開かれた瞳へと翡翠が突き刺さる。

 本来斬から派生する武闘スキルではあるのだけれど、今回使った斬は結構違う。主にスピードが。

 斬って体勢が崩れたところから突く。それが一連の流れなんだけど、駆け抜けながら斬ったのでその流れはできない。なので壁を作り出し、それを蹴り飛ばすことで方向転換。そのスピードのまま、眼へと飛び込んだ。


 キ、シャァァァ……


 突き刺さったことで体から力が抜ける。後は聖火で燃やして……完了っと。


「ふぅ、さてと……痛っ!?」


 いきなり足に激痛が走る。


「うぅぅ…」


 たまらずその場にへたり込み、自身の足を確認する。

 するとまぁ見事に折れてた。バッキバキだよ。関節変な方向曲がってるよ。


「…壁蹴った時?」

『だろうねぇ。最大の身体強化で走ってからの蹴りだもんね。ボロボロになるよ』

「………」


 攻撃じゃないもんなぁ……というより、身体強化ってそんな危険なものなの?


『本来は違うんだけど……まぁ主だし』

「……その言葉で全部片付けるのもどうかと思うんだけど」


 とりあえず魔法で治す。ほんと便利。

 ……身体強化、か。


「……痛ったいなぁ」


 もう一度最大の身体強化を展開すると、体全体にまで激痛が走った。緩めるとそれは収まる。けれど、こんなこと前は無かったはずだ。

 最大の身体強化。これは確かに反動がくる魔法のひとつ。けれど、ここまで顕著に反動がくることはなかった。


「……力が、強すぎる」


 それに、私の体がついてきていない。そういうことだろう。

 ……待てよ?体の内部を直接強化したら……


「うぷっ」


 嘔吐く。気持ち悪い。なんだろう…内臓そのものが空回りしているような、そんな気分になる。


『当然だよ…強化するってことは、ってことでもあるんだから』


 …いつもより速く心臓が動いたりするって事ね。うん、死ぬな。


「…身体強化、どこまでできるかな」


 少しづつ身体強化の魔力を増やす。

 一割…二割…五割…八…痛い。


「八割が限界かな」


 体が軋む。止まっている状態でこれだから、戦闘で使うなら五割くらいか。


『その五割でもだいぶヤバいけどね…』

「……そうね」


 具体的に言うと、指先で砕ける。

 ……小石とかじゃなくて、岩だよ。でかいヤツ。


「この状態で私が持てる武器って、翡翠くらい?」

『そうだと思う。多分他の武器だと触れただけで砕ける』

「そ、そこまで…」


 試しにアイテムボックスから鉄刀を取り出『バキンッ!』……

 地面に散らばる、粉々になった鉄の破片。元、鉄刀。


『……元気だして、ね?私がいるよ!』

「……うん」











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