第142話 木…?

 私が危惧していた群がられるということはなく、残り3体のパラサイ・カラモスも同じように一体ずつ倒すことが出来た。……もちろん、身体強化は5割で。じゃないと私のほうが危険だからね。


「これで、全部だよね」

『多分』


 最後の一体の眼を突き刺して倒しつつ気配察知……うん。これでこの階層の敵は全て倒すことが出来たみたいだ。


「……あれ?」


 最後の一体が聖火で燃え尽きる。……しかし、一向に聖火の勢いが収まらない。それどころか寧ろ広がっているような…?


「ちょ、ちょっと!?」


 聖火はどんどん地面に燃え広がり、天井すらも壁を伝って燃え広がっていく。一応私が燃えることは無く、熱くもないんだけど……これ、どうしよう?


「……そもそも燃えないはずなんだけど」


 ここに来た時、感覚として燃やせないと理解していたはずなのに、何故か今は聖火がダンジョン…世界樹を燃やしている。

 ……もしかして、全ての敵を倒したから?


「可能性としては、それくらいか…」


 パラサイ・カラモス……あ、パラサイト。つまり、寄生。

 …そうか。あれが世界樹に寄生していたからか。それが邪魔をして燃やせなかった。だから今燃えるようになったのか。


「……なんだか、頭の中がスッキリする」

『ね。私も心地いい気がする』


 聖火が燃えた場所は、黒っぽい木肌ではなく、白っぽい木肌へと変化している。それも、薄らと光っているような……?

 それと同時に、なんだか頭の中がスッキリしたような…心地いい感じがする。


「……結局、全部燃えたね」

『だね』


 まぁいいんだけど。悪い状態になった訳じゃないし。寧ろ…のだろう。


「……ん?」


 突然目の前に、木の葉が1枚ヒラヒラと落ちてきた。上を見上げても、白い木肌の天井しか見えない。

 ……とりあえず落ちてきた木の葉をキャッチする。


「……?」


 木の肌とよく似た、真っ白な色の葉。裏を向けても普通の木の葉。


「……何か意味がある?」


 くるくると指先で木の葉を回す。……すると、いきなり木の葉が光を放ち始めた。


「ええっ!?」


 その光は徐々に強くなり、やがてあまりの眩しさに何も見えなくなり…………。



















「うぅぅ………あ、れ…?ここ、は…」


 いつの間にか意識を失っていたらしい。私が目を醒ましたのは、真っ暗な空間。先程までいた場所とは違う。


「……階層が変わったのか」


 どうやらあれが階段の代わりだったようだ。聖火が燃え広がる前の、さっきの階層と同じような黒っぽい木肌が目の前に広がっている。

 ……とりあえず世界地図ワールドマップを展開。…わぁお、真っ黒。やっぱり新しい階層だ。そして……新しい敵の反応もひとつある。


「…同じ敵なら、対処のしようがあるんだけどね」

『まぁ、ね。でも多分敵は別だよ』


 そうだろうね…はぁ。やるか。

 気配察知を広げ、敵の位置を把握。詳しい数は……1、だけ?


「…ものすご〜く嫌な予感しかしないんだけど」

『同じく』


 さっきは5。今度は1。

 ……絶対さっきより厄介な敵の予感しかしない。


「…まぁいいか」


 敵は、倒すだけだ。


 とりあえず気配察知で敵の位置を確認しつつ、世界地図ワールドマップを埋めていく。

 …うん、やっぱり他に敵はいないや。反応がある敵は、一向に真ん中のほうから動く気配はない。


「…やるよ」

『がってん!』


 だからそんな言葉どこで覚えて『女神様』…あ、そ。




 とりあえず敵の姿を確認……あ、いた。けど……


「……あれ、だよね?」

『……多分』


 角から敵がいる場所を覗いて見えたのは……木。巨大な、木。


「…えっと」


 鑑定っ!


 ???:???


 お、おう……何も分からないよ。

 でも、だからこそひとつ分かる。それは……ただの木ではなく、敵であるということ。


「…とりあえず」


 アイスアローで様子見。


 ビシっ!


「……うん、知ってた」


 アイスアローが木?に届く寸前。枝がひとりでに動き、アイスアローをはじき飛ばした。まるで暴れ○みたいな。


「……あの動き、間違いない」


 触手のような、あの動き。パラサイ・カラモスによく似ている。つまりあれは……


「親玉かぁ…」


 それか、パラサイ・カラモスが成長した姿か。まぁ、この際どちらでも変わらないんだけど。


 ここから魔法を撃ち続けても、全てを弾かれるだろう。聖火の矢という手段もあるけれど、実はアレ、射程が物凄く短かったりする。10メートル…いや、5メートルほどしかない。ここからあの敵まではおよそ15メートル。絶対届かない。


「…懐に潜り込んで、直接斬るしかないか」


 身体強化を5割で展開。とりあえず近付いて斬ってみることにする。さっきの敵の弱点である眼はどこにあるか分からないし、そもそも弱点が同じかも分からないから。


「…ふっ!」


 敵までの道は一直線。そこを一気に走り抜ける。

 しかし、当然あちらも黙ってはいない。眼を開けている様子はないのに、正確に私へと触手を放ってくる。


「ちっ!」


 聖火を纏った翡翠で斬り飛ばすが、何分数が多い。

 ……それに、斬られた時の対応が速い。ちょっとでも燃えれば、最低限だけを自切し、また襲いかかってくる。


「うざい!」


 斬れないことはないけれど、本当にうざい!

 一旦壁を作り出し、身を隠して体を休める。一瞬でも時間が稼げればそれでいい……と思っていたけれど、壁に隠れた瞬間、激しかった攻撃が止んだ。


「…え?」


 作り出したのは簡易的な壁だ。あの触手の威力なら数発で簡単に砕けるくらい脆い。それなのに、攻撃してこない。

 そもそも壁の強度を看破できていないという可能性もあるけれど、それでも何回かは叩いたりしてくるはずだ。こんなにいきなり攻撃が止むのは変だ。


「……それが、突破口になるかもね」


 さぁ。仕切り直しだ。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る