最終章
第139話 世界樹のダンジョン
……どれくらい漂っていただろうか。一向に世界樹の根の終わりが見えない。
「どこまであるのよ……」
ずっと泳ぎ続けているけれど、白いような空間は終わりが見えない。一応転移も試してみたけれど、そもそも魔法が発動しなかった。
陽の光はないし、ほんとに時間感覚が狂う。まぁ幸いと言っていいのか、お腹がすくことは無いし、疲れもない。
……だからこそ、余計にどれだけ経っているのかが分からないんだけどね。
「………ん?」
その後も何も考えず泳ぎ続けていると、水面のようなものが見えた。まさかあれが終わり…?
「……ぷはっ!」
どうやら正解だったらしい。水面から顔を出した先にあったのは、少し薄暗い空間。どうやらここが世界樹の中のようだ。
どうやら私がいるのは池のような場所だったので、とりあえず池の端まで泳ぎ、水(樹液)から出る。
「……体は濡れてないか」
世界樹の樹液は、水とはまた違うのだろうか?
……いや、ちょっと待った。刷り込まれた知識に、樹液なんて言葉はなかった。確か文字化け……■%ゝに満たされてるってなってたはず。
「……どことなく、あれに似てるよね」
そう。コルギアスの魔剣の説明書き。■$#に似ている。偶然なのか、はたまた……
「……まぁ、考えても仕方ないか」
エルザでも、コルギアスの魔剣の文字化けについては分からないって言ってたしね。とにかくここから帰ることを第一に考えよう。
「転移は……あれ?」
根から出たのだから転移が使えると思ったんだけど……魔力が霧散し、転移魔法が発動しない。この感覚は……
「……確か、世界樹ってダンジョンだったよね」
ダンジョンには、魔法を使うことが出来ないものも存在する。世界樹がそうだと聞いたことないから断言は出来ないけれど……魔法が使えないのは、事実だ。
「でも使えないのは…転移系くらいか」
光の玉や風を起こすことは出来たので、妨害を受けているのは転移系のみなのだろう。階層を好きに移動させない為だろうか?
「出口は…」
ダンジョンなのだから、無論入口も出口も存在する。でもここが何階層か分からないからなぁ……
「…上に向かおう」
普通ダンジョンは地下に生成される為、下に降りることで奥に進むことが出来るが、世界樹は上に伸びているので、その逆になる。つまり、上に向かうということは、ダンジョンの奥へ進むことになる。下に降りるという手段もあるにはあるが……わざわざここまで連れてきたのだから、おそらくこのダンジョンをクリアさせることが目的なのだろうと思うんだよね。
「その理由は謎だけどね…」
まぁ、いいか。アイテムボックスから翡翠を取り出す。
『あっ!主っ!』
翡翠から、嬉しそうな、安心したような気持ちが伝わってきた。
「どうしたの?」
『
どうやら私は、完全に世界から隔離された場所に居たらしい。だからアイテムボックスを使うことが出来ず、翡翠との繋がりも切れたのだろう。
「心配かけてごめんね。私は大丈夫だから。…それで、いきなりで悪いんだけど、人型になれる?」
『もちろんっ!………って、あ、あれ?なんで…』
そう翡翠が意気込んだけれど、私の手元で少し揺れただけで、人型になる気配はない。
「どうしたの?」
『……人型に、なれない』
「……え?なんで?」
『分からないよぅ…でも、悪い気はしないよ』
……となると、エルザの仕業の可能性が高いか。わざわざそんなことをする理由なんて……いや、あるな。
『あるの?』
うん……おそらくだけど、私
『なんで?』
「それが分かれば苦労はしないんだよなぁ……」
『……まぁ、確かに』
はぁ……とりあえずこのまま行こう。よろしくね、翡翠。
『うんっ!』
さて。まずは階段を探さないとね。気配察知は……一応使えるか。学園のダンジョンみたいにモヤがかかったような感覚になるかと思ったけれど、杞憂だったようだ。
それで確認したのだけれど……敵らしき存在はこの階層に5体ほどいる。位置は完全に把握出来ているので、エンカウントせずにダンジョンを進むことは出来るだろう。けど……
『けど?』
……何故か。本当に何故かなんだけど、倒さないといけない気がするんだ。全ての敵を。私はそこまで戦闘狂ではない。避けられる戦いは避けたい派だ。でも……何故か倒さないといけない。そう思ってしまうんだ。
『………私は、主に従うよ。どんな判断だったとしても』
……ありがとう。
「じゃあ、やろうか」
『うんっ!』
私は翡翠を持ち直し、気配察知を広げる。さすがにまとめて相手をする気にはなれないので、一体ずつ倒していくことにする。
………あった。一体だけで行動している反応が。
「
いや、正確には使える。だけど、私が今いる所以外は真っ暗になっていて、なにも見えない。どうやら歩かないと地図は完成しないらしい。
私は強さを抑えた光の玉を創り出し、見つけた反応に向けて歩みを進めた。
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