第125話 友人襲来
………正直、アッシュのことを舐めていたかもしれない。
宣言通りアッシュとご飯の後に模擬戦したんだけどね……かなり強くなってたよ。いやまじで。2倍……いや、もっとかもしれない。勇者つおい。
「ほとんどあなたの特訓のせいだと思うけどね……」
……否定はしないよ。だってアッシュ口では文句言っても、ちゃんと頑張るからさ。つい楽しくなっちゃって、シリルより厳しくしちゃったんだよね。それが原因かな。
「まぁここまで強くなれば上等だと思うよ」
「……あなたはそれ以上だけどね。というかほんとおかしいわよ?アッシュがあんなに強くなってるのに、あなたものすごく余裕そうだったんだもの」
「えー……そう言われても」
だって、ねぇ?強くなったって言っても、所詮私には到底及ばない訳で。
あ、もちろんちゃんと真面目にやったよ?前言ってた手加減してるように見えない戦い方。
「傍から見たら、手加減してるようにしか見えなかったわよ」
「えぇー…頑張ったのに」
「……やっぱり手加減されてたのか」
あっ!アッシュが落ち込んじゃった!
「いやまぁうん……手加減はしたよ。でもね?アッシュ十分強くなってるからね?」
「……それでも、負けた。本気を引き出せなかった」
「アッシュ。こういうのは酷かもしれないけれど……まず今のあなたでは無理よ。というか、私ですらフィリアに勝てる気がしないもの」
「……え?母さんでも?」
「そう。でも、あなたはまだ伸び代がある。高々数日の特訓でしょう?そんな短期間で強くなれるなら、苦労はしないわよ」
まぁ、1週間と経っていないからね。何事も経験だ。このまま特訓を続ければもしかしたら私にだって……いや、無理か。伸び代が違い過ぎる。ほんと私って人外だよね……。
って、話がそれた。まぁ、私に勝てなくとも、大体の敵は倒せるようになるはずだから、問題ない……ない、よね?うん。
「……うん。俺、もっと頑張るよ」
「その意気よ」
アッシュがマリアの目を見てしっかりと宣言した、ちょうどその時。ドアがドンドンと叩かれた。誰が……あぁ、パパか。って、ちょっと待って!?なんで
「帰ったぞー!それとフィリア!
そう大声で叫びながら家へと入ってきた。その後ろから現れたのは……
「フィリアさんっ!どういうことですの!?」
……キャサリンでした。なんでいるの!?
「俺が連れてきた。ちょうどリナの屋敷に戻る途中でばったり会ってな」
ばったりって……キャサリン、そんな行動範囲広かったっけ?
「フィリアさん!?」
「あー、うん。言いたいことは分かるけど、ちょっと落ち着こうね」
「落ち着いていられません!なんで隠してたんですの!?」
……ん?これはまさかロビン、私の事を養子じゃなくて娘って言ったか…?
「えっとー…ひとまず、キャサリンは何を聞いた?」
「フィリアさんが!あの!ロビン様とマリア様の…」
ゴクリ…
「養子だってことですっ!」
「良かったぁぁぁ!」
あ、思わず叫んでしまった。
「な、何がですか?!」
「いや、なんでもないよ。こっちの話」
ロビンよ、疑って悪かった。ちゃんと説明してくれたのね。
「うん、とりあえず話があるってことでいい?」
「当然ですっ!聞けばベルさんは知ってたそうじゃないですか!わたくしだけ仲間はずれですの!?」
あぁー……そういう認識になっちゃうのね。参ったなぁ…
「ふふっ。元気がいいわね」
「あっ!すすすいません!マリア様」
「いいのよ、そんなかしこまらなくて。フィリアの友達なら、ね?さて。フィリアは自分の部屋に案内してあげなさい。話するんでしょ?」
「……分かった。いこっか」
「は、はい!」
キャサリンの手を引っ張って二階にある私の部屋へ。
「ここがフィリアさんのお部屋ですの?」
キョロキョロとキャサリンが私の部屋を見回す。……なんかソワソワするな。自分の部屋を家族以外に見せたことなんてないからね。
「案外、シンプルですのね」
「…まって。キャサリンは私の部屋をどう思ってたの?」
「どうって……もっと可愛らしいもので溢れているかと。例えば……人形とか?」
……生憎ないです、そんなもの。女子力低くて悪かったねっ!
「で、でもこういう何も……いえ、シンプルなのもいいと思いますわ!」
何も無いって言おうとしたよね?……反論できないのが悔しい!
……いやうん。ほんとに何もないんだよ。あるのは勉強するための机とベット。本棚とかくらい?本棚も魔法書とか教科書とかがほとんどだからね。可愛げなんてないよ。
「……勉強熱心ですのね」
キャサリンが私の本棚をみてそう呟いた。
「別にそうでもないよ。ただ、楽しくてね。ついつい読みふけっちゃうんだよ」
魔法書を見てる時は、こんな魔法使ってみたい!みたいにワクワクしたりするからさ。
……いやまぁやろうと思えばすぐ出来るけどね。こういうワクワクする心は忘れたらダメだと思う。……というか、他にワクワクするものが無い。しくしく。
「で、キャサリンはどうやってここに?」
「えっと…ロビン様と出会いまして、『俺の家くるか?』と言われましたので……」
……事案になったりしない?大丈夫?誘拐じゃないよね?
「あっ!ちゃんと家に許可は取りましたわよ!」
それなら安心……うん。
「で、カトリーナ様の転移魔法で送って頂きましたの」
「なるほど……で、どうするの?」
「?どうするとは?」
「いつ帰るのってこと」
見たところほんとに直で来たみたいだから、荷物とかないし。泊まりでは無いよね?ね?
「まだ決まってないです。でも…」
「でも?」
「多分明日以降になります」
「………つまり?」
「泊まります!」
………フラグだったね、うん。
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