第12話 ベルのステータス

 朝起きると、晴天だった。


「いい天気…」


 コンコン


「フィリア様、お目覚めですか?」

「うん」


 生まれたときからいつもレミナが世話をしてくれてるけど、さすがにもう自分で着替えをしたい。


「ねぇ、レミナ?」

「はい?なんでしょうか?」

「もうそろそろ着替えとか自分でやったほうがいいと思うんだけど…」

「…確かにもう5歳でしたね。分かりました。次からは部屋に着替えを置いておきますので、ご自身で着替えてみてください」


 次からなのね…まぁいっか。

 さて、今日はやらなきゃいけない事がある。エルザのとこに殴り込みに行かなければならない。あの世界って殴れるのか?


「…フィリア様、なにかよからぬことを考えていませんか?」

「え!?う、ううん。なにも考えてないよ?」


 やば、顔に出てたか?


「…そうですか…はい、出来ましたよ」


 話している間だけで私の着替えを済ませてしまうとは…


「さあ、下に降りて朝ごはんを食べましょう。もうお二人共待っていますよ」

「はーい」


 下に降りると、いつものように2人がいた。


「おはよう、パパ、ママ」

「おう。おはよう」

「おはよう」


 朝ごはんは基本変わらない。でも、飽きないように色々味付けを工夫しているらしい。料理や家事は、マリアとレミナで分担している。


 私は朝ごはんを食べるとすぐに上に上がり、エルザのとこにいく予定だったのだが…


「フィリアちゃーん!おはよー!」


 この声は…

 私はドアをあける。そこにいたのはベルだった。


「おはよう、ベル。どうしたの?」

「うん!今日はね、私の家に来てほしいの!」

「え!?」


 なんかいきなりなんですけど?


「あーなんか"グラン"が近いうちに遊びに来てくれとかいってたなー」

「グラン?」

「私のお父さんだよ!」


 へー。ベルのお父さんはグランって言うのか。


「じゃあパパ、行ってきていい?」

「ああ!もちろんだ!楽しんできておいで!」

「やったー!いこ!フィリアちゃん!」

「あ、ちょ!まっ!」


 例の如く連れ去られるのであった…


 ーーーーーーー


「行っちゃったわね」

「ああ…それで?フィリアの祝福ギフトはどうだったんだ?」


 ああ、フィリアはまだロビンに話してないのね。多分フィリアは自分が貰った力について隠している。確かなのは、魅了の力ね。それもかなり強力な。

 なにせ私は状態異常耐性をもっている。そんな私が魅了にかかったのだから。しかも、ロビンも魅了にかかった。私よりも状態異常耐性が強いのにもかかわらずね。


 …フィリアはその力が良くないものだと理解しているんでしょうね。実際今は魅了の力を使っていないし。たぶん、昨日部屋に篭っていたのは、魅了の力を制御する練習をしていたのかしら?


 どちらにしろ、今は魅了が発動していないし、フィリア自身が言いたくないことを私の口から言えるわけないわ。


「ええ、私と同じ『無詠唱』と『魔法行使力強化』を持っていたわ。それに、『アイテムボックス』も貰っていたわ」

「本当にそれだけか?」


 やっぱりロビンも薄々感づいてるのね。でも、フィリアが言っていない以上これは私の憶測でしかない。だから、もっているとは言えない。


「ええ。フィリアはそう言っていたわ」

「そうか…」


 そら、心配よね。だってあなたと私の鑑定が効かないんだから。ステータスを貰ってから、フィリアを鑑定したのけど、全て???になっていて、何一つ分からなかったもの。ロビンのステータスは嫌というほど見えるのに…


 名前:ロビン Lv.82


 種族:高位人間ハイヒューマン


 職業:勇者


 称号:勇者 英雄 スタンピードを倒せし者 守り手


 HP:5470 魔力:36100 攻撃:6570 魔法攻撃:2140 防御:6830 魔法抵抗:5510 速さ:5190


 スキル:Lv.9 気配察知 鑑定 剣術

 Lv.7 雷属性魔法 空間属性魔法 気配隠蔽 挑発 収納魔法 魔力制御 魔力操作 見切り 状態異常耐性

 Lv.5 縮地 剛力 罠察知 治癒魔法


 祝福ギフト:連戦 指揮


 ロビンは勇者なだけあって、全てのステータスが高い。私に比べて戦闘系のスキルも多いし、魔力も多い。ステータスだけみたらとてもいい人なんだけど…フィリアにベッタリすぎるのよね。フィリア自身も、ロビンのことを嫌いな訳じゃないんでしょうけど、関わりづらいのでしょうね。


 とにかく、今フィリアにはベルちゃんという友達も出来たし、このまま私たちはフィリアの成長を見守りましょう。それと、魔法も教えなくっちゃ!


 ーーーーーーー


 私がベルに手を引かれ、連れてこられたのは、村の中心から少し外れた二階建ての家だ。


「ここが、私のお家だよ!」

「へぇー」


 案外大きい家だな。すると、家の扉が開き、男の人が出てきた。


「あ、お父さん!ただいま!こっちがフィリアちゃんだよ!」

「ああ、おかえり。そして初めましてかな?ベルの父親のグランだ」

「はい。初めまして、フィリアと言います」

「おお、年の割にしっかりとした挨拶だね。いつもベルが迷惑かけるね」

「いえ、いつも楽しいですよ?」

「そう言って貰えると有難いな」


 そんなふうにやや大人な会話をしていると、ベルが乱入してきた。


「もう!2人とも話しすぎ!」

「「あ、ごめん」」


 そんな感じで、3人で一緒に家に入った。そういえば、ベルがなにを貰ったのか気になるし、普通の人のステータスも知りたい。失礼かもしれないけど、勝手に見せてもらおう。


 名前:グラン Lv.38


 種族:人間族


 職業:猟手


 称号:森を知る者 狩猟名人


 HP:360 魔力:100 攻撃:481 魔法攻撃:56 防御:480 魔法抵抗:355 速さ:752


 スキル:Lv.6 罠設置 短剣術 気配隠蔽 解体術

 Lv.5 弓術 気配察知 家事 料理


 祝福ギフト: マッピング


 …低くない?いや、これが普通?これが普通なんだとしたら、私とか両親って、かなり人外じゃね?ベルは?


 名前:ベル Lv.6


 種族:人間族


 職業:猟手(仮)


 称号: お転婆 世話焼き 猟手見習い


 HP:300 魔力:365 攻撃:356 魔法攻撃:245 防御:250 魔法抵抗:471 速さ:680


 スキル:Lv.10 弓術 射撃 解体術 気配察知

 Lv.3 短剣術 気配隠蔽


 祝福ギフト:猟手の極み


 …えっとー?まずねーベルちゃん?あなた親より強いんですけど?そして、なんでLv.10のスキルがあるのかな?あれか?祝福ギフトか?


 猟手の極み:Lv.10の弓術、射撃、解体術、気配隠蔽スキルを与える。


 これだったわ。このことベルは親に報告してるのかな?


 私はベルと一緒にベルの部屋に行った。ベルの部屋は2階にあった。


「ねぇベル?」

「うん?なぁに?」

「自分のステータスについて、誰かに話した?」

「うん。お父さんにね」


 そっか…もう言っちゃってたか。


「どう言ってた?」

「別になにも?あ、でもロビン様に相談しなきゃとかなんとかって」


 ベルのお父さんもベルのステータスがやばいって分かったんだね。ロビンに報告するのなら安心かな?とりあえず、鑑定して知ってるけど、一応聞いておかないとね。


「ベルの祝福ギフトはなんだったの?」

「あ、それねー『猟手の極み』ってやつだったよ!」

「へー。どんなの?」

「なんか色々なスキルくれた」


 …鑑定して正解だったかも。

 ベルの今後について色々頭が痛い今日この頃。


 

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