第18話
17~完~
「え?」
突然言われたその言葉に喉が詰まる。
だってその声は妬み、恨みの声だからだ。
「真宵様達にどうやって入れ込んだのよ。まさか金でも詰んだんじゃないでしょうね?」
「いや、そういうのじゃ……」
否定しようとしたその顔に鋭い痛みが走る。
叩かれたのだ、左の頬を。
「どうやって入れ込んだか知らないけど、あんたのこと気に食わないのよね。何よその目は……睨んでるわけ?」
「……」
ああやっぱり、目をつける人はどこにでもいるんだ。
新しい生活にどこか憧れを持っていたというのにそれが潰える音がする。
「あんまりでしゃばっているともっと酷い目に合わせるから」
採寸を終わらせ彩華を置いて二人は部屋を去っていく。
出る杭は打たれる、本当にそういうことだ。
「……でしゃばってる、ねぇ」
そんなつもりはなかったが、クラスのアイドルのように慕われている黒紅や組のみんなもきっと人気者なんだ。こんなぽっと出の娘には強く当たるのも当たり前かもしれない。
「耐える……しかないわね」
叩かれた頬を触り、部屋を出た。
――放課後
言われた通り正門前に行く訳にはいかず、裏門から出ようと試みたが、
「……月白さん?」
何故か裏門のところで目を閉じて立っている月白がいたのだ。
ほっとくわけにもいかないしとりあえず声をかけてみよう。
「あのー……月白さん大丈夫ですか?眠いなら車とか迎えに来てもらったら……」
「……ん?」
腕をゆさぶれば気づいてくれたのか目を擦り微かにこちらを見つめてくる。
夕焼けに白い肌と日光に当たって光まつ毛がとても綺麗に見える。
「ああ、おはよう……」
「あ、おはようございます……ってなになに!?」
挨拶を交わした途端に体が持ち上げられ裏門から逆の方向に歩き始める。
「ちょっと!やめて!離して!」
「真宵に……呼ばれてるよ」
「いや、でも……」
「大人しくしてて……」
そのまま広い歩幅で正門前に向かっているようだ。
周りの目が気になるので正直逃げたいが男女の差なのか腕を振りほどくことが出来ない。
「私!お嬢のところには行きませんから!」
「……なんで?」
「なんでって……」
迷惑をかける、また売られる、そんな重い感情がぐるぐると頭を巡るがそれを気にせずどんどん歩を進める月白。
「……本当に、嫌、なんです……」
「……」
ストンと降ろされたかと思えばとても近い、鼻がつきそうな距離に顔を近づけてきた。
「誰かに、目をつけられた?」
「……!?」
「図星、みたいだね……」
そっと頭を撫でられ、そのままゆっくり顔を上に向けさせられる。
「でも、真宵達は……守ってくれるよ……?」
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