第16話
ヤクザらしくない、といえばいいのかそう感じるのが異常なのか。
ここにいるのは人を馬鹿にして見た目で判断して、自分を上だと信じ込むような人柄じゃない。
「……変な奴ら」
クスっと笑った彩華に皆が目を向ける。
何やら驚いた顔だ。
「な、なによ……」
「……彩華、笑った顔、可愛いね」
「は、はぁ!?」
東雲の一言にこちらの方が驚いてしまう。
「皇さんは目つきは鋭いんですけど、笑うと年相応の女性でいいですね」
「お嬢との喧嘩の時はあーんなに怖い顔してたくせに可愛いところあるのね」
「か、可愛いくない!!私はどうせ無愛想だし、目つき悪いし……」
顔を見られないよう手で隠しながらそう言うが、それでも可愛い可愛いと今度は手を剥がそうとし頭を撫でられそうになり必死に抵抗してしまう。
「……なによ、あの女」
キーンコーンカーンコーン……。
お昼の時間なんてあっという間で予鈴が鳴りはじめ次第に生徒が教室へ戻る。
「三組は次は確か専攻授業だよな?」
「ええ、確かそちらの二組もでしたね」
「専攻授業?」
聞いた事のない言葉に聞き返せば神無月がそうですねとこちらを向く。
「専攻授業は自分の選んだ武術の実践授業の事です。例えば僕ならフェンシング、東雲さんなら弓道、ニナさんはテコンドーのように実に多種な武術を選ぶことが出来ます」
「え、でも私選んでないけど……」
「お嬢が勝手に進めてるわ、確か剣道のはずだから第四稽古場ね。でも今日はまず自分の道具のサイズ合わせからだから気負いしなくていいわよ」
そういうと蝶野と赤石はまた後で、と手を振りながら二組の教室へ戻っていく。
そして東雲と神無月と共に教室に戻ろうとした時。
「あ、やかちゃーん!!」
「うわぁ!!?」
突然後ろから誰かが突撃してきたのだ。
「誰!?何!?どこいった!?」
後ろをふりかえっても上を向いても体当たりしてきた人の姿が見えず、思わず動揺する。
声の主は分かってはいるのだが。
「反射神経鈍いなぁ、もっと鍛えないと抗争の時にお陀仏になっちゃうよ〜?」
ぷにっと頬をつつかれたと思えばその方向に黒紅がいた。
何度も色んな方向を見たのに姿を現さなかった、一体どんなトリックなんだろう……。
「……どうやって姿消してたのよ」
「えー?普通に彩華ちゃんが振り向く瞬間に他の死角にまわっただけだよ?美羽だってできるよねー?」
「ねー……」
どんな反射神経だ、そんなの化け物だと思ったが二人を見た時ふと思った。
自分から見れば二人とも小さいから見失うのかと。
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