第15話
それに合わせて彩華も弁当を取り出し、蓋を開ける。
中はサンドイッチのようだ。ハムたまごにレタスポテトサラダ、カツ、フルーツ、カラフルなそれに目を輝かせる。
「す、すごい……美味しそう……!!」
「あら、彩華のはサンドイッチなのね」
そう言う蝶野の弁当は雑穀米にササミのチーズやしそ巻、ヘルシーなものが多い。
赤石と神無月は似たようなもので唐揚げにハンバーグと回鍋肉と肉料理メインのようだ。
「いやぁさすが麗羽さん、みんなほぼバラバラの弁当作ってるなんてすごいなぁ。他の仕事もあるってのに毎日ありがたいぜ全く」
「……トマト……」
東雲の弁当はお子様ランチのようなものでプチトマトが二個ほど入ってる。それに対して少し顔をしかめているようだ。
「美羽、また昨日のトマトサラダ残したんでしょ。結衣もおこってたわよ」
「トマト……苦手……」
「今日は頑張って食べましょう?もしかしたら美味しいかもしれませんよ?」
嫌そうな顔をする東雲を見て、もう一度東雲の弁当を見てみるが少し違和感がある。
プチトマトにしては艶やかというか鮮明に光沢を放っている。
「ねぇ、そのプチトマトなにか、かかってる?」
彩華がそう言うと東雲は持ってたフォークでプチトマトをつつけば、カツンカツンと固いようだ。
試しに東雲が口に含むと顔をぱあっと輝かせる。
「……飴で包んでる……」
「デザートだったみたいだね。みんなのは果物とかだけど私はフルーツサンドで東雲さんは飴だなんて」
「……美羽で、いいよ。わたしも、彩華って呼ぶから」
いつもの無表情に見えるが、微かに喜んでいるような感覚がある。とても些細な差だが少し心の距離が近づいたようでこちらも嬉しい。
「じゃあ俺らも頂くか!」
「ええ、じゃあ……」
「「「「いただきます」」」」
彩花はまずハムたまごを一口大きく食べた。卵の優しい風味と僅かなマヨネーズの味がハムにマッチしていて絶妙なバランスだ。
次にカツサンド、柔らかいパンに厚切りのカツがジューシーでたまらない。肉汁が溢れるみたいだ。
「ん〜美味しい!!」
更にレタスポテトサラダ、こちらはマヨネーズが少々多めに使われているようでシャキシャキのレタスとよく合う。
最後にフルーツサンド、お店に出てるような可愛らしい断面にたっぷり生クリームとカスタードが使われている。
「……彩華、食べるの早い……」
「あら?……ほんとね、余程美味しかったのね」
「あ……!これは……えっと……人の作った手料理って久しぶりで……」
恥ずかしくなって俯けば、周りのみんなはいきなり大笑いをする。それにびっくりしたが、
「な、なんでそんな笑うの!?」
「いやだって……ふふ」
「本当に幸せそう食うんだもんな!はは、これから毎日、美味い手料理だからな」
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