第12話
「……え?……えおぁぁぁぁ!!?」
いきなりのハグにびっくりして体を動かして距離をとる。
「……?」
月白はポカンとした顔でこちらを見てくる。
「逆にこっちがポカンってするって!おかしいって!」
「悠ちゃんはひっつき魔だからね〜しょうがないよ〜」
「ちゃんとさせなさいよ!あんた婚約者なんでしょ!?ていうか普通婚約者が他の女の子ハグするの嫌じゃないの!?」
「いやー婚約者って言っても親が決めたことだからね〜、形式的なものだからさぁ」
神無月にお茶を入れさせてのんびりと設置されてた冷蔵庫から勝手にシフォンケーキを食べて眺めている。
いいのだろうか、勝手に食べて。
「……えっと、月白(つきしろ)、悠(ゆう)……ここの生徒会長で、真宵の婚約者、三年だよ」
柔らかく笑うその表情からは微塵も強さが感じられないし、なんなら緩い。
東雲と同じくらい緩い。
「ああ、えっと皇彩華です。失礼ですが本当につ、強い、んですか?なんか凄い緩いというかなんというか……」
言ってはいけないが心の中で言う。
(弱そう)
と。
「悠ちゃんは強いよ〜僕とトントンくらい、いや僕の方が強いかな?」
「……違う、僕の方が、強い」
「は?」
「……」
互いに睨み合ったかと思った瞬間、黒紅と月白はお互いに向かって走り黒紅は袖から細かい装飾が彫られたナイフを出して月白に斬りかかり月白はそれをいなしている。
いなしたかと思えば月白がその長い足を黒紅の顔向けて振り上げるが黒紅の腕で止められる。
「なになになに!?なんで今喧嘩するの!?」
「東雲さん、どっちが勝つと思いますか?」
「引き分け、かな?」
「賭けもできませんねぇ」
「ナニを呑気にお茶飲んでんの!」
凄いのんびりとお茶とシフォンケーキを楽しんでいる。
椅子に飛び移ったりテーブルを蹴りあげたりしながら見えない速度で喧嘩が繰り広げられている。
(ああああ、部屋が…… 部屋がどんどん壊れていく)
「せめて誰か止められないの!?」
「いつもは赤石が止めてるんですけど、あの人真面目なので授業を受けてますから呼べませんね。あとは、はぐれ者くらいしか……ああ、東雲さん止めれましたっけ?」
「……めんどくさいんだよなぁ、みうを」
(みつをかな??)
そんなことを考えている間にも床や壁には黒紅が投げるナイフや簪や鉄扇が突き刺さったりするしもう椅子やデーブルも壊れてしまっている。
キンコンカンコーン……。
「月白の旦那〜書類持ってきやし……こらぁ!!あんたら部屋を壊すんじゃねぇ!!」
赤石が書類を持って入ってきて怒鳴り声をあげた。
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