第9話

「一階二階三階それぞれ一年二年三年のクラスがあってー保健室も一階ね!音楽室とかは四階にあるからそういう授業の時は登らないといけないからねー!」

 授業のチャイムも随分前になってしまった。黒紅の横にいた二人も一緒に着いてきて学校の案内もしてくれてるが、

「ねぇ転校初日にサボってるんだけど私大丈夫なの?不良生徒だと思われない?」

「大丈夫だって言ったでしょ?今日はほとんど普通授業ない実践授業ばかりだし学級委員の二人も一緒だからね!」

「学級委員……?ていうか名前知らないんだけど……」

 そう言いながら振り向くと男の方はニコと笑い、美羽と呼ばれてた子はこてんと首を捻る。

「紹介が遅れました。ボクは神無月湊(かんなづきみなと)です。一年三組、フェンシングを専攻しています。どうぞ気軽にお呼びください」

「東雲美羽(しののめみう)、専攻は弓道」

「湊ちゃんも美羽もとってもいい子だから仲良くしようね!」

 神無月と東雲の腕の間に黒紅が入り二人の腕を引き寄せる。なんの躊躇いもなく、その姿は微笑ましいものだった。

 渡り廊下を通った先には大きな稽古場が見えて、中ではたくさんの人が様々な武術を習っている。

「この稽古場が基本的な武術とかを教えるところね。基本は専攻した武術を習うけど護衛術だけは共通して習うから!」

「護衛術?」

「うん、結構不良に絡まれることもあるからいなしたりして無力化して、きちんと警察に連絡するようにって一応教わるからね」

「へぇ、しっかりしてるのね」

「今年からの試みだけどね!」

 ルンルン気分の彼女を止める人もいない、きっといつもこんな調子なんだろうなと彩華は思いながら後ろを着いていく。

「あ!ニナちゃんだ!」

 渡り廊下を歩いていると向かいから蝶野が鞄を持って登校してきていた。

「おはようお嬢、ああ皇さんに校内案内してるの?変なこととか教えちゃダメだからね」

 困った顔で話す蝶野を見て雑誌で見ていた印象がかなり違うのを感じる。

 それもそう、雑誌などで見る蝶野、ニーナはどこか影のある冷ややかな瞳をしているから。周りを蹴落とし頂点に君臨する悪名高き女帝のような表情をする彼女もこんな柔らかい表情をするんだなと。

「あ、あの蝶野、さんは……」

「ニナでいい、あたしも彩華って呼ぶから」

 黒紅の頭を一撫でしてこちらを向く。

「えっと、ニナはなんでヤクザなんかに?色々危ないんじゃ……」

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